柔道の東京五輪女子52キロ級金メダルの阿部詩(21=日体大)が18日、東京・世田谷区の日体大記念講堂で行われたシンポジウムに参加し、アスリートのサポート体制や心理ケアに関するディスカッションを行った。

 東京大会では男子66キロ級Vの兄・阿部一二三(パーク24)とともに〝兄妹金メダル〟の快挙を達成。今後に向けて「一番の目標はパリ五輪で2連覇。いろいろな方々にサポートしていただきながら頑張りたい」と改めて4年後の決意を語った。

 阿部が口にした「サポート」について、この日のシンポジウムでは様々な議論がなされた。現在、阿部は日体大アスリートサポートシステム(NASS)で月1~2回の心理サポートを受けている。「自分の心理状態を話し合いながら理解してもらっています。今の頭の中を整理して、心理状態が悪い場合はより良くするためにどうするか?を話し合いながら、試合までの期間を過ごしています」。近年のスポーツ界は、アスリートのメンタルヘルスに関する取り組みが進歩。阿部は「自分の伝えたいことを伝え、ずっと聞いてくれる。アドバイスをもらって、次につなげています」とサポート体制に満足している。

 その一方で東京五輪前には女子アスリート特有の悩みもあった。阿部は「月経に関して、東京(五輪)の前はすごく悩んでいた。他の人と比べることができないので、気楽にすぐ話ができる方がそばにいるとありがたいと感じていました」と打ち明けた。その言葉を聞いた進行役の日体大・須永美歌子教授は「少し不安な思いをしているのは人づてに聞いていた。お薬を飲むのか、判断が難しかったと思います。今後はぜひNASSの女性アスリートサポート部門をご利用いただいきたい」と受け答えた。

 一方、学業との両立は充実。授業で学んだ「稽古論」について「すごく私に新しい刺激を与えてくれた。五輪の書の内容を教えていただいたり、宮本武蔵の生き方も学べた。昔の考え方でも現代につながる」と感想を口にした。しかし、コロナ禍のオンライン授業に関しては「対面と違って内容が入ってきにくい。先生の顔を見て声を聞いている方が内容が入ってくるし、すぐに質問もできる。その部分は困りました」と話した。

 現在は日々のトレーニングに励む一方、週1日の休日は「温泉にハマっています」と笑顔。トレーニングと学業の合間にリフレッシュを図りながら、新たな野望へ向かっている。