東京五輪のボクシング女子フェザー級で日本女子初の金メダルを獲得した入江聖奈(21=日体大)が18日、東京・世田谷区の日体大記念講堂で行われたシンポジウムに参加。アスリートのトレーニングや精神的サポートを実践する日体大アスリートサポートシステム(NASS)に関するディスカッションにリモートで加わり、積極的に意見を述べた。

 NASSからの指導でアブローラー(腹筋ローラー)をアップの一貫として取り入れた入江は、その成果について「上半身に刺激を入れることでパンチがしっかり決まることが分かった。アブローラーってメイントレーニングの一つだと思っていましたが、あえてアップで取り入れることでパフォーマンスがより引き出せるのだと感動しました」と話した。

 また、東京五輪代表選考の前には貴重な心理サポートを受けたという。人一倍、緊張する性格の入江がその悩みを打ち明けると、先生から「みんなが味わえる緊張ではない。日本代表を争う緊張は、限られた人にしか与えられない。その緊張を誇りに思って」とアドバイスされた。当時を振り返った入江は「この緊張って、ぜいたくなものなんだなって視点でとらえることができた。その言葉は今でもずっと心に残っていて、緊張した時に思い返しています」と感謝した。

 一方、アスリートサポート体制における課題も議論された。意見を問われた入江は海外遠征時のドクターについてこんな提言をした。

「五輪や世界選手権は問題ないのですが、ローカルな国際大会の時に同伴してくれるドクターがボクシングにはいなくて。海外で体調を崩した時、ドーピングに引っ掛からない薬や専門的な知識を提供してくれるドクターがいない。そういった大会ではちょっと不安です」

 周囲にコーチはいるが、ドーピングに関する専門的な知識は必ずしも持ち合わせていない。入江は自身も含めて「素人の見解かもしれない」と落ち着かないようだ。実際、高校時代に海外試合で熱を出した時、現地のドクターに謎のピンクの薬を飲まされたという。入江は「すごくドキドキしながら試合の期間を過ごしていた」と振り返りつつ「やっぱり日本のドクターがいるとすごく安心だなと思います」と本音をのぞかせた。