第94回選抜高校野球大会(甲子園)第2日(20日)の第2試合は近江(滋賀)が長崎日大(長崎)を延長13回タイブレークの末に6―2で下した。近江は、京都国際(京都)の新型コロナ集団感染による出場辞退を受けて、大会開幕前日の17日に近畿地区の補欠1位校として代替出場が急きょ決定。聖地でプレーできる幸せをかみ締めたナインがハツラツとプレーし、さわやかな風を吹かせた。

 準備期間はわずか2日。技術うんぬんよりも気持ちを前面に出して戦った。試合前のミーティングで多賀監督はナインを集めて、こう鼓舞した。「京都国際さんの無念の思いを背負って戦おう。甲子園から感動を発信するぞ!」。土壇場の9回に2点差を追いつき、タイブレーク方式(無死一、二塁から攻撃)の13回に4点を奪う執念の勝利。「選手たちが思いをしっかりくんで戦ってくれたことが、私としては一番うれしかったです」。

 チームをけん引するエースで4番・山田陽翔投手(3年)が決勝打を放ち、投げては165球の完投。近江の精神的支柱でもある右腕は「出場できるうれしさよりも、出場できなくなったチームのことを考えるといたたまれない気持ちでした」。同じ野球人として相手を思いやることのできる心優しい右腕は、この日も頼もしかった。多賀監督も「タイブレークの初球で決めるのが山田。そして、あの場面で山田という巡り合わせも〝持っている〟ところ」と賛辞を惜しまなかった。