歌手石川さゆり(64)が25日、出身地の熊本城ホールで、50周年記念コンサート「ただいま 故郷」を開催し、記念イヤーに突入した。1973年(昭48)3月25日に「かくれんぼ」でデビュー。同じ日に熊本市内の体育館で行ったコンサートから、石川の歌手人生がスタートした。

「ただいまー。今日から50周年が始まります。ふるさとからデビューし、いろんなことがありました。コロナ禍もあり、みなさんがお越しいただけるのか、昨日は眠れませんでした。でも、こんなにたくさんのお客さんが来てくれてうれしいです」。公演は、昨年のNHK紅白歌合戦で、ギタリストMIYAVIとラッパーKREVAと共に披露した「火事と喧嘩は江戸の華」からスタート。「津軽海峡・冬景色」や「ウイスキーが、お好きでしょ」「天城越え」などヒット曲を中心に全22曲を披露した。

50周年を迎えたことに、石川は「ありがたいですし、不思議な気持ちです。でも、変わることなく、石川さゆりの歌を楽しんでいただきたい。今度はこんな歌を歌うんだとか、いつもそう言ってもらえるように歌っていきたいですね。私には歌しかないですし、明日に向かう皆さんに寄り添うようにやっていきたい」。さらに「デビュー5年目で紅白歌合戦に出させてもらいました。周りは全員が先輩で『来年もここで歌えるように頑張るのよ』と先輩から言われことを覚えています。いつのまにか最多出場ですと言われるようになって。自分では何も変わっていないんですけどね」などと振り返った。

6年前の熊本地震で熊本城は大きな被害を受けた。修復は進み、天守閣の復旧工事は終えたが、すべて復旧が完了するのは37年度の予定。石川は「表向きの復興は早いのでしょうけど、まだ、大変な暮らしをしておられる方も多いです。世界を見回しても、災害や戦争で瞬間に崩れてしまいますが、再建していくのは大変ですよね」。

コンサートには、熊本県のPRマスコットキャラクターのくまモンも駆けつけた。まだ知名度がないころ、県に依頼されて、くまモンが石川の1カ月公演に同行。ファンへの浸透を図ったこともあった。いわば育ての親でもあるが「2週間前に、くまモン祭があってお祝いに駆けつけました。長いつきあいの友だちですね」。

今回の公演には母も駆けつけた。前日には一緒にお墓参りも済ませ、宿泊先で一緒にお風呂にも入ったという。「ご先祖さまにも50周年に入ったことを報告できました。母はずっと応援してくれて、劇場公演の際には、いつも煮物とお赤飯を差し入れてくれました。それはもうなくなりましたが、こういうことも含めて50周年なんですね」。

この日には、50周年記念第1弾で、130枚目のシングル「残雪」をリリース。来月20日には、東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦、NARGOとコラボした第2弾シングル「虹が見えるでしょう」も発売する。そして、5月18日には、阿木燿子、宇崎竜童夫妻、加藤登紀子、布袋寅泰らとコラボした新作アルバム「X-Cross4-」も発売するなど、精力的な活動が続く。 【竹村章】