思わず笑みがこぼれた。フィギュアスケートの世界選手権(フランス・モンペリエ)の男子フリーが25日に行われ、ショートプログラム(SP)首位の宇野昌磨(24=トヨタ自動車)が202・85点をマークし、合計312・48点で悲願の金メダルを獲得。これまで世界選手権、グランプリ(GP)ファイナル、五輪で〝銀止まり〟だった男が、ついに世界の頂点に立った。

 試合後、宇野は「初めて世界選手権で1位になれたことにすごくうれしく思います」と晴れやかな表情を見せたが、実はフリー曲「ボレロ」がクライマックスに差し掛かる演技終盤のステップで笑顔を浮かべていたのだ。そのシーンを問われると「ホントにいろんな気持ちがありました」と〝種明かし〟をした。

「演技としてこんなもん、割と頑張ったんじゃないかなって気持ちもありましたし、このステップを転んでもステファン(ランビエル)コーチが満足してくれるようにやりたい、そしてちょっと体力がきつかったっていうのもありますし」

 様々な思いが混ざっていたようだが、最も大きかったのは初Vへの「確信」だった。

「ひとつ前のグループから、ほとんど全選手の演技を見ていた。自分がこういう演技内容だったらおそらく優勝できるんじゃないかなって考えていたので、本当にいろんな気持ちの笑顔だった思います」

 一方、歓喜のV後も涙を見せなかった理由については「優勝がゴールではなく、僕のゴールは自分でもどこにあるか分からない。もっと成長した先にあるものだと思っているので、涙は出なかったんじゃないかなと思います」と、さらなる成長を誓った。