涙はなかった。第94回選抜高校野球大会(甲子園)は28日に9日目を迎え、第1試合で九州国際大付(福岡)が浦和学院(埼玉)に3―6で敗退。準優勝を成し遂げた2011年大会以来となるベスト4進出は果たせず辛酸を舐めた。

 3試合連続で先発マウンドに立ったエース左腕の香西一希(3年)は終盤まで粘りの投球を見せたが、同点の8回に鍋倉の勝ち越し3ランを被弾。133球の力投も実らずラストイニングで力尽きた。

 それでもチームは昨秋九州王者、明治神宮大会4強の底力を存分に発揮した。最後まで相手に食らいつき、白熱の好勝負を展開。8回には1点を返し、なおも二死満塁から2年生スラッガーの4番・佐倉侠史朗が左前打を放って試合を一時振り出しに戻した。

 結果として勝利を呼び込めなかったものの、試合後の佐倉は「日本一を目指して甲子園に来て、打倒・大阪桐蔭を誓っていたが、浦和学院さんに負けてしまった。同点に追いついて気の緩みがあったかもしれない。悔しいです」と自責の念を口にしつつ「甲子園はこれまで体験したことのない、いい景色だった。もう1回来たい」と力強く前を見据えた。

 今大会は花巻東・佐々木、広陵・真鍋、大阪桐蔭・前田とともに「2年生BIG4」として注目されていた。初戦のクラーク記念国際(北海道)戦では4打数無安打だったが、2回戦の広陵(広島)戦で3安打を放ち、この日の準々決勝で値千金の同点打。しかし聖地で期待された本塁打は不発に終わった。

「長打が打てなかったことは全然気にしていない。『チームの勝利に貢献できる一打を打てるように』と言われているし、ホームランはヒットの延長線上。もっと高みを目指さなければいけない」と佐倉は自らに言い聞かせた。

 一方の楠城徹監督(71)も「よく粘ってくれたし、頑張ったと思う」と佐倉を含めナインの奮闘を称えた。

 今夏の聖地帰還を目指し、2年生4番を打線の軸に据えるチームが悔しさを胸に再び動き出す。