元世界女王の見解は――。フィギュアスケートの世界選手権で、日本勢はシングルで宇野昌磨(24=トヨタ自動車)と坂本花織(21=シスメックス)が8年ぶりに〝男女ダブル金〟を達成。ペアで三浦璃来(20)、木原龍一(29=ともに木下グループ)も銀メダルと躍進した。一方で強豪のロシア勢が不在となり、メダルの価値を巡って論争が勃発。本紙の取材に応じたプロスケーターの安藤美姫(34)が独自の視点から大会を総括し、ロシア問題についても切り込んだ。

 坂本はジャンプ時代の真っただ中に大技を入れず、出来栄え点に重きを置いて初の金メダルに輝いた。安藤は「ジャンプだけにフォーカスされがちですが、フィギュアは全体が一つの作品。私たち日本人は、そこに誇りを持ってきた。彼女の選択は良かったと思う」とたたえた。

 一方で「ロシア勢がいたら…」との声もつきまとう。「もし同じ立場だったら?」の問いに、安藤は「私の時代に置き換えたら、浅田(真央)さんとキム・ヨナが欠場して優勝した感じ」と前置きしつつ「私なら、たぶん『ロシアの選手がいなかったから取れた金メダルだと思います』って正直に言っちゃうと思います」と本音を明かした。

 だが、これはあくまで安藤自身の表現方法。坂本については「ロシアがいたらどうなっているかは、彼女が一番わかっていること。周りがとやかく言うのはおかしいと思います。彼女は今できる100%を出して優勝した。そこに誇りを持つべきだと思います」と強調した。

 一方、坂本に「最高のレベルじゃない」などと苦言を呈したロシアの重鎮タチアナ・タラソワ氏へは「日本の否定というより、母国に対する、熱い気持ちの表れでしょう。彼女はいい演技をすれば敵国でも祝福してくれる人」と一定の理解を示した。

 北京五輪代表だった15位の河辺愛菜(木下アカデミー)については「北京五輪で大きなミスがあり、よく立て直しました」と話し、同じく北京組の樋口新葉(明大)が11位に粘ったことで来季「3枠」が確定したことを「本当に良かった」と喜んだ。