フィギュアスケートの世界選手権で、日本男子が大躍進。プロスケーターの安藤美姫(34)が独自の視点から大会を総括した。

 男子シングルは宇野昌磨(24=トヨタ自動車)が悲願の金メダル。安藤は「テレビ越しに、いい空気感がバシバシと伝わってきた。ステファン・ランビエル・コーチと一緒に作ったプログラムへの思いが、画面からバーッと放たれていた」と驚いた。

 4回転5本という高難度プログラムもさることながら、宇野に勝利をもたらしたのはメンタルの充実。安藤は「フィギュアってコーチの存在が本当に大きい。私も演技が始まると、心の頼りはコーチだけだった」と明かした上で「宇野選手の性格と、ステファンが作る雰囲気がバッチリ。2人とも氷上ではストイックで、それ以外は和気あいあい。この環境が宇野選手にハマったのでしょうね」。

 宇野はアイスショーの控室で「ゲームしているか、寝ているか」というおっとりタイプ。常にイヤホンで音楽を聴いて神経を集中させる羽生結弦(ANA)とは真逆だ。「宇野選手は自分を追い込むのではなく、楽しくやるほうが力を発揮できると思います」(安藤)

 銀メダルの鍵山優真(オリエンタルバイオ・星槎)については「少し緊張して見えました。五輪メダリストとして、いい意味で自覚が芽生えたのかな」と分析。6位の友野一希(セントラルスポーツ)に対しては「代役出場の準備をしっかりしてすばらしい」と絶賛した。

 ペア、アイスダンスの種目もかつてない盛り上がりを見せた。ペアは〝りくりゅう〟こと三浦&木原が銀メダル。「自分たちの実力によってメディアを振り向かせたのは本当に大きいし、本来あるべき姿」(安藤)。また、アイスダンスでは結成2季目の〝かなだい〟村元哉中&高橋大輔(ともに関大KFSC)が16位ながら存在感を示した。

 安藤は「やっぱりこれだけ注目されるようになったのは高橋選手のおかげ。これは疑いようがない事実」とした上で「ペアとダンスはシングルで成功しなかった人が転向するイメージが強かったですが、これからは両種目を目指す日本人が増える思うし、絶対に増やさないといけません」と語気を強めた。