“女芸人マニア”として知られているお笑いコンビ「馬鹿よ貴方は」の新道竜巳が、これから“馬鹿売れ”しそうな女芸人をまた発見しました。今回は、まだデビューして1年未満ながら、これまでいろんな人生経験を積んできた37歳の女性ピン芸人を紹介する――。

 今月19日に東京・新宿バッシュ!!で「ジョシ全開」というライブが開催されました。タイトルの通り、女芸人だけのライブだったんですが、すごくおもしろかった! その出演者の一人をご紹介したいと思います。

【プロフィル】
 芸名‥岡明太子
 本名‥岡咲友子(おかさとこ)
 生年月日‥1984年9月2日
 養成所‥タイタンの学校3期生(2021年卒業)
 所属‥フリー
 活動開始‥2021年4月26日
 目標‥お笑いのギャラだけで生活をする
 影響を受けた芸人‥爆笑問題

「どうせ生まれてきたのなら、好きなことをしよう」

 こんな考えを持つようになって、芸人を志したそうです。でも、お笑いを始めるのは比較的遅かった。本人に話を聞いてみると、「20代のころは引きこもりがちというか、処方薬中毒で精神科に入院したりしていましたが、ペルーに行ってシピボ族のアヤワスカという儀式に参加したところ治りました。直近では、銀座でホステスやってました! でも本当は、中洲の方が長いですが…」とのことです。

 薬を過剰摂取する“オーバードーズ”の時期があり、致死量の倍の量を飲んだり、ペット用に出された薬を飲んだりしたこともあったそうです。集中治療室に入ったこともあるなど、さまざまな人生経験をお持ちです。

 でも最近は、“お笑いひとすじ”ではなく、お笑いとは無関係の社会生活を送ってからこの世界に入り、その経験をネタに生かすという芸人が増えています。お笑いを始めるのが遅いことをむしろ武器にする芸人が多いようです。

 お笑いの世界では、自分のスタイルを見つけるまで10年以上かかる芸人もザラにいます。たとえばスギちゃんが「ワイルドだろ~」を見つけるのに17年かかりました。にしおかすみこさんもSMキャラにたどり着くまで、14年近くかかっています。しっかりとハマるキャラクター、スタイルを見つけるのは、すごく時間がかかるんです。

 でも岡明太子さんは、その形が最初からできています。ニュースをアナウンサーが読むというスタイルのネタで、話の内容を徐々に変えていくという作りでした。“コント風漫談”とでもいうのでしょうか? コントとしてはシンプルな形ですが、何がすごいかというと、見た目(ネタ中はカツラをかぶってます)、声質、体形、話し方…。すべてに説得力があることです。

 岡明太子さんは感情的に話すというよりも、淡々と冷静に話を進めていく特徴があるので、「ニュースを読む」という設定に落とし込んだのも適切な判断だと思いました。この段階ですでにフリとオチがきれいにできているので、見る側にとってはどこで笑ったらいいのか、すごく分かりやすい。フリとオチは“芸歴何年”というベテランでも、意外とうまくいかないケースがよくあるんですが、まだ芸人になって間がない岡明太子さんがすでにできている。すごいことだと思います。

 ネタ作りで大切なことは「何をやるか」ではなく「誰がやるか」。たとえばジブリのネタをやる石出奈々子さんが強烈におもしろいのは、幼い顔をした背の低い女性が子供の役をやるから。それで説得力が増してきます。イカツイ顔でゴツい体格の男性は、チンピラ役をやると説得力が出る。演じるキャラクターに見た目がピッタリ合っていると、他の人と同じことをしても格段におもしろくなるんです。

 岡明太子さんは、まだドカドカ受ける形まではたどり着いていませんが、フォーマットができればあとはその道を走り切るのみ。現在は「パンチライン」という、三軒茶屋にある芸人バーでアルバイトをしながら活動されているそうです。近いうちに「THE W」の決勝に進出できる逸材だと思うので、期待しています。