いったい何が起きていたのか――。日本代表は29日のカタールW杯アジア最終予選最終戦(埼スタ)で格下のベトナム相手に1―1で引き分け。7大会連続7度目のW杯出場を決めた24日のオーストラリア戦から先発9人を入れ替え、〝日本の至宝〟MF久保建英(20=マジョルカ)も投入されたが、不発に終わった。W杯本大会へ向けて何とも締まらない最終戦に、元日本代表FWの武田修宏氏(54=本紙評論家)が森保ジャパンの「深刻課題」を指摘した。


 ホームでの最終予選ラストゲームでは、前半20分に先制を許すも後半9分にDF吉田麻也(サンプドリア)が同点ゴール。同25分にMF田中碧(デュッセルドルフ)が勝ち越し弾を決めたかに見えたが、その直前にMF南野拓実(リバプール)の腕にボールが触れていたため、得点を取り消された。結局、相手ゴールをこじ開けられず、FIFAランキング98位の相手(日本は23位)に勝ち切れなかった。

 まさかの引き分けと言っていい結果にも、武田氏は「こういう時もある。引いて守る相手を崩すのは、マンチェスター・シティーだって難しいし、イタリアだって(24日のW杯欧州予選プレーオフ準決勝北マケドニア戦で)あれだけ攻めながら負けちゃうんだから」と受け止めた。それでも、ふがいない結果に終わったのは事実だ。

「これまであまり試合に出ていないメンバーが中心になって、自分もそういう経験はあるけど、みんな『自分が』って感じで力が入っていたよね。いい方向にいく時もあるんだけど、今回は悪いほうに出た。ボールを動かしてゲームを支配していけば、相手は疲れてくる。それで後半に仕留めるコンセプトで90分、通してやっていたら楽に勝てたと思う。オーストラリア戦のスタメン組ならそれを実行できていたんじゃないかな」

 つまり主にサブ組で構成されたこの日の先発では力不足というわけだ。「やっぱり差があるよ。途中から伊東純也(ゲンク)、守田英正(サンタクララ)、南野らを投入していったけど、それは(サブ組に奮起を促す)監督のメッセージだよね。この差を埋めていかないといけない」

 中でも久保は先発で活躍を期待されながらも、得点に絡めなかった。これには「切り返して左足でシュートを打ってくるとか、プレーのパターンを分析されていたように感じたし、他の選手と同じで力が入りすぎていた。そこはメンタルの部分だけど、コントロールできるようにならないと。すばらしい選手なのは間違いないけど、うかうかしていられないね」と物足りなさを口にした。

 24日のオーストラリア戦で途中出場し衝撃の2ゴールを決めたMF三笘薫(サンジロワーズ)も、フル出場で見せ場をつくれなかったが、武田氏は「(ベトナムは)オーストラリアの選手より速さもあるし、得意のドリブルにも対応されていた」と指摘した。

 11月に開幕するカタールW杯で目標に掲げるのはベスト8入り。歓喜から一転、改めて課題を突きつけられた森保一監督は「勝てなかったということは、まだまだW杯に向けて力をつけろということ。本大会ではもっと力をつけて、みなさんに喜んでもらえる結果を出したい」。残り8か月で間に合うのだろうか。