三森すずこ:「オッドタクシー」でアイドルの「見たくない」裏側 “キラキラだけじゃない”リアル

「映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」で三森すずこさんが声優を務める二階堂ルイ(中央)(C)P.I.C.S./映画小戸川交通パートナーズ
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「映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」で三森すずこさんが声優を務める二階堂ルイ(中央)(C)P.I.C.S./映画小戸川交通パートナーズ

 2021年4~6月に放送されたテレビアニメ「オッドタクシー」の劇場版「映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」(木下麦監督)が4月1日に公開される。同作でメジャーデビューを控えるアイドルグループ「ミステリーキッス」のセンターを張る二階堂ルイを演じたのが、人気声優の三森すずこさんだ。二階堂は、抜群のルックスに加え、歌もダンスもこなし、メンバーからも一目置かれる存在だが、とある秘密も抱えている。さまざまな作品でアイドル的キャラクターを演じてきた三森さんは「キラキラしてそうなのに、キラキラしていない。こんなアイドル見たくなかった!と思いました(笑い)。本当にこの世界に存在しているんじゃないかとリアルに思った役を演じるのは初めてかもしれない」と語る。“キラキラだけじゃない”アイドルの「リアルな会話を表現しようとした」という演技のこだわり、作品の魅力を聞いた。

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 ◇二階堂ルイに共感するも「リアルにこういう子がいたら……」

 「オッドタクシー」は、タクシー運転手の主人公・小戸川が乗せる癖のある乗客とのやりとりが、一人の少女の失踪事件につながっていく……というストーリー。キャラクターは、可愛らしい動物ではあるが、実は本格的なミステリーで、テレビアニメが放送されると、先の読めない展開、複雑に張り巡らされた伏線、癖の強いキャラクターなどが話題になった。三森さんは、収録前に大まかなストーリーの説明を受け、衝撃を受けたという。

 「こんな可愛いキャラクターたちが登場する本格的なミステリーなんだって、衝撃でしたね。絵柄とストーリーが結びつかなくて『どういうこと?』って。登場人物も多くて、ストーリーも複雑で、混乱してしまうほどでした」

 三森さんが演じる二階堂ルイは、ファンに対してはアイドルの可愛らしい姿を見せながら、並々ならぬ出世欲、野心を持つ生々しさを感じさせるキャラクターだ。三森さんは二階堂に対して「プロ意識はすごい。私自身も向上心が強かったり、負けず嫌いな面があるので共感できた」と感じる一方で、「リアルにこういう子がいたら怖いです(笑い)」とも話す。

 「アイドルグループで、リアルにそういう子は少ないとは思うんです。やっぱりチームだし、みんなで頑張ろうみたいな気持ちが出てくると思うんですけど、ルイちゃんはそういう柔らかい部分を全部取っ払って、人間が心の底で思っている“核”みたいなものだけを取り出したキャラクターというか。同じメンバーに対する発言も、普通はオブラートに包むところを包まずストレートに言葉を発する。それが彼女の気持ちいいところであり、すごく強いなって」

 ◇こんなアイドルいる!? ミステリーキッスの会話をリアルに

 ミステリーキッスは、二階堂以外にも、金銭への執着が強い市村しほ、真っすぐでピュアだが謎も多い三矢ユキと濃いメンバーがそろっている。小泉萌香さんが市村、村上まなつさんが三矢を演じた。三森さんは、ミステリーキッスの3人の会話では「リアルさ」を意識した。

 「ミステリーキッスを見ていると、こんなアイドルいる!?っていう、怖さも感じました。市村さんのお金に対する執着心は怖いなと思うし、三矢さんは怖いぐらいのピュアさがある。小泉さん、村上さんはそんな二人を素朴に、自然に演じていて、そこから来る怖さがあって面白いなと感じました。それに対して、私が演じる二階堂ルイは、ピリッとしている感じで差が出たらいいなと。間の取り方とか、会話中の反応の仕方とか、そういうところがリアルな会話に聞こえるよう意識しました」

 テレビアニメでは、二階堂が独白する第11話も話題になった。過去を語る二階堂の淡々とした口調からは、すごみも感じられた。

 「第11話の収録では、感情が動いたまましゃべっていました。二階堂はある事件に巻き込まれただけみたいな気持ちもあるし、取り乱さずにちゃんとやるのがいいのかなって。誰かに事情聴取されているような感じというか(笑い)」

 ◇キラキラだけで終わらせない「オッドタクシー」 演じる楽しさも

 三森さんは、「二階堂のような役を演じるのは初めて」といい、新たな役柄への挑戦にもなった。

 「キラキラしてそうな役なのに、キラキラしてないというか。地に足がついているというか。本当にこの地球上に存在しているんじゃないかとリアルに思うような役は初挑戦だったかもしれないですね。人間のあんまり見たくない部分も見せてくるんだ!と。私自身、“キラキラ”だけを見たかったなと思うけど、そこで終わらせないのが『オッドタクシー』。でも、二階堂のキラキラだけじゃないところに演じる面白さをすごく感じました」

 三森さんはテレビアニメのエンディングテーマ「シュガーレス・キッス」も担当した。三森さんの可愛らしい歌声が際立つアイドルソングだが、周囲のスタッフ、キャストからはストーリーが進むにつれ、「毎回こんなに明るい曲で終わるなんて『逆に怖い』とみんなにいわれました(笑い)」と明かす。

 劇場版は、テレビアニメのエピソードを再構成し、衝撃の最終回の“その後”も描かれる。三森さんは「一人一人の証言から、真実がより見えてくるというか。事件の真実は一体何なのか、警察になって取り調べするような気持ちで見てもらえるんじゃないかなと思います。エンドロールの最後の最後まで見てください!」と見どころを語った。

 劇場版では、各キャラクターの証言によってストーリーが進行していく。三森さん演じる二階堂も証言者の一人だ。“その後”の二階堂が何を語るのか、見逃せない。

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