「再建」はできるのか。国内のプロボクシングを統括する日本ボクシングコミッション(JBC)が3月31日、財政難で解散することが正式に決まった。JBCは財政破綻の要因について「新型コロナウイルス禍による収入減」と主張したが、元世界3階級制覇王者の亀田興毅氏ら3兄弟の訴訟で約1億円の賠償をJBCから勝ち取った北村晴男弁護士(66)は「ウソだ!」と猛反論。旧態依然とした体質を厳しく糾弾するとともに、今後の立て直しへ妥協なき姿勢を示した。

 ――JBCの言い分をどう受け止めたか

 北村弁護士(以下、北村)永田(有平)理事長はコロナ禍を解散の理由に挙げていますが、これは100%ウソです。コロナによる減収は事実でしょうが、解散の原因ではない。なぜ財政が悪化したかと言うと、彼らはコロナ以前からずっと違法行為を繰り返し、本来必要のない多額の弁護士費用や損害賠償金などを支払ってきたから。それなのに、コロナにかこつけて「自分たちは悪くない」と説明をしている。もうコンプライアンスがゼロの団体ですよ。

 ――ウソの上塗りということか

 北村 非を認めない組織は絶対に良くならない。根本原因に気づかない限り、また同じことが起こります。仮にコロナが破綻の原因なら、そりゃあ援助する企業はいくらでも出てきますよ。でも、支援が得られずに解散せざるを得ない状況になった。つまり、コロナのせいじゃないってことですよ。自分たちが違法行為を重ねたことに尽きる。まあ、ホントは分かっているでしょうけどね。

 ――亀田氏の裁判の「1億円」が決定打になった

 北村 今回の裁判の目的は(亀田氏側の)損害回復とコミッション正常化の2つ。解散されると損害の回復はできないかもしれませんが、コミッションの正常化は達成できる可能性が出てきました。解散は(金銭的に)痛手ですけど、それは分かっていたことなので仕方がない。でも、それで手を緩めていたら両方勝ち取れません。われわれはただ黙って解散を見ていません。正しい立て直しができるようにわれわれも尽力したいと思います。

 ――どうすれば正常な組織になるか

 北村 まず人を変えない限りダメです。この人たちが運営していたら、何回立て直しても、すぐ解散することになる。裁判所から違法を指摘されたのに全く反省しない人たちですよ。世間の人には知られていませんが、これが実態です。そんな人たちがボクシングの統括団体を立て直せるわけがない。全く新しい業界の人たちを中心としてコミッションを運営するなら、正常化の可能性が十分あると思います。

 ――状況を知る北村弁護士が再建の中心に立てばいいのでは

 北村 ボクシング界の皆さんが、私にそういう役目は期待されないでしょう。ただ、仮定の話にはお答えしづらいですが、正常化のためにやれることは何でもやります。まず今までの人じゃダメということを発信しないと、彼らを軌道修正できない。これまでの人たちの責任を追及する意味で貢献できればと思っています。まあ、たぶん(JBCには)嫌われるでしょうけど(笑い)。

 ――ボクシング界では村田諒太対ゴロフキン、井上尚弥対ドネアなど大決戦が続く

 北村 テレビ観戦ですけど、私もボクシングに関心を持って見ています。まず選手に何の罪もありません。選手の皆さんが安心して試合できる環境を整えてもらいたいと思っていますし、いい試合をしてボクシング界を盛り上げてもらいたい。われわれはあくまで〝外科手術〟を一生懸命やってきただけ。病巣を取り除かないことには絶対に組織は健康な体にはなりませんから。選手はもともと健康なので、彼らが活躍できるようにボクシング界に注目していきたいと思います。

【JBCはコロナ禍の影響主張】JBCは31日に理事会と評議委員会を開き、解散を正式に報告。その後の会見で永田理事長は「2年連続で純資産が300万円を下回った」と説明し、財政難に至った最大の要因をコロナ禍による収入減とした。

 今後はJBCの名称を残したまま「清算法人」として再建を目指す。永田理事長は「運営黒字化のためには増収策の検討が必須」と話し、スポンサー企業を探す意向も明かした。また、JBC認定の試合は滞りなく運営していくという。

 一方、亀田氏の裁判で東京高裁から支払いを命じられた約1億円については「相手方の弁護士さん(北村氏)に再建計画を話し、必ずJBCが責任を持ってお支払いするつもり」(永田理事長)としている。