【直撃!エモPeople】紅白歌合戦に19年連続で出場し“ご当地ソングの女王”の異名を持つのが演歌歌手の水森かおりだ。2月には初めて千葉県を題材にしたシングル「九十九里浜」をリリースし、全県制覇までまた一歩進んだ。いまや押しも押されもせぬ紅白歌手となったそんな水森を“女王”に導いた曲とは――。

 シングル、アルバムの曲で、これまで歌ってきたのが43都道府県。44県目となったのが今回の「九十九里浜」だ。水森は「恋に破れ、愛する人の思い出を九十九里の砂浜に埋めに来た女性を歌っています。今回の楽曲は歌の入り方に特徴があって、物語のプロローグのような、これからどんな世界が待っているんだろうというワクワク感がある曲です」。

 新型コロナウイルスが猛威を振るいだしてからは、歌の題材となった場所に行くことができず、地元の人の前で歌うこともなかなかできなかった。「昨年末にシングルの『鳴子峡』では地元の方の前で歌えたんですが、毎年、当たり前のように歌ってきましたので、久々に歌えたのはうれしかったですね。やっぱり地元で歌うとみなさんからの反応、反響は大きい。パワーをもらえる」という。

 だからこそ「コロナが落ち着いたら、たくさん千葉県に行きたい」と水森。千葉県は東京の隣接県だが、「九十九里はちょっと距離があるので、やっぱり『来てくれるとうれしい』と言ってくれる人がいっぱいいる。今年は県内の隅々まで行きたいです」と意気込む。

 水森が歌った曲の題材となった地方は観光客も増え、今では「地域活性化につながる」とまで言われるようになり、各地から「歌ってほしい」と懇願されるほど。そんな“ご当地ソングの女王”をヒロインにしたマンガ「水森かおり物語」も出版社「少年画報社」の公式アプリ「マンガDX+」からリリースされているが、第1話のテーマとなったのが「東尋坊」。2002年にリリースされ、水森が「この曲がなかったらどうなっていたか」と一大転機になった曲だ。95年にデビューして約7年、「なかなか結果が出ない。そこそこ枚数は出ているんだけど、頭一つ抜け出せない焦りもあって、そろそろ潮時かなって思ってたころ」だったという。

 そんな状況の中で、「東尋坊」が大当たり。ヒット街道をひた走った。「当時は口コミで『東尋坊っていう歌がいいらしいよ』と広がっていく感じでした。キャンペーンがあると、じゃあ行ってみようかっていう人が増えましたね。それこそ小さな会場だと座れないとか、人があふれちゃうとか。どこに行っても人だかり。本当にうれしかったですね」と振り返る。

 曲がヒットしたことで「いままで出られなかったような番組にも出られるようになった」というが、同年の紅白には届かなかった。それでも、この勢いが、翌03年にリリースした「鳥取砂丘」の大ヒットにつながり、念願の初出場。そこから19年連続で出場している。

 昨年の紅白では京都の清水寺で「いい日旅立ち」を歌唱した。歌唱の際には新潟県の佐渡島、金沢、静岡などの風光明媚な観光地を、水森が訪れている場面がVTRで流れた。

「NHKさんから、コロナで旅行に行けないみなさんに、日本の美しい風景を紹介しながらというコンセプトで、そのためには水森さんしかいないって言われたんです」

 ロケは一部の人しか知らないトップシークレット。「レコード会社の社長さんも知らないし、ロケ地のドライバーさんや撮影スタッフも、みんな知らない」と秘密裏に行われた。「6県24か所でロケをしたんですが、全部で1か月かかりました。紅白では使われなかったシーンとかもあったんです」

 苦労したかいがあってか、歌手別視聴率の前半部分ではトップの数字を獲得。「結構、反響あったみたいですね。SNSではサザエさんのオープニングみたいって話題になった」と笑みをこぼす。

 今年目指すのは20回目の出場。「やっぱり紅白は夢の舞台。1年間、そこを目標に頑張ってきて、発表になるまでドキドキして眠れない毎日を過ごすぐらい緊張する。でも、出場させていただいても、年が明ければ、みんな同じスタートラインに立つわけじゃないですか。だからまた、気持ちを新たに、新曲を出して出場できるように頑張ろうって思っています」。“ご当地ソングの女王”はまだまだ突き進む。

 ☆みずもり・かおり  8月31日生まれ、東京都出身。1995年に「おしろい花」でデビュー。2002年の「東尋坊」がカラオケファンに広く支持され、03年「鳥取砂丘」が大ヒットして、同年の「NHK紅白歌合戦」に初出場。現在、19年連続出場中。4月6日、東京・西新井文化ホールで開催される「第二十一回・長良グループ 夜桜演歌まつり」に出演を予定している。