一夜明けても興奮が冷めやらない。日本ボクシング史上最大のイベントと言われたWBAスーパー&IBF世界ミドル級の王座統一戦(9日、さいたまスーパーアリーナ)は日本の至宝・村田諒太(36=帝拳)が大善戦したが、新統一王者のゲンナジー・ゴロフキン(40=カザフスタン)の「壁」にはばまれた。

 あと一歩だった。最強男・GGGを相手に序盤から果敢にボディーで攻めたシーンに、多くのファンは「いける!」と感じただろう。リングサイドで観戦していたWBC世界ライトフライ級王者の寺地拳四朗(30=BMB)も同じ心境だった。

「2、3Rでボディーを入れてゴロフキンが下がった時、うわ! これいけるんじゃないかって思いました。あそこでもっとボディーが欲しかったですが、そんな簡単に打てないですよね…。でも、村田さん、本当にすごかった。興奮しました」

 試合後、帝拳ジム代表の浜田剛史氏は「よくやった、もったいなかった…と2つの気持ち」と本音を吐いた。誰もが歴史的勝利を思い描いたが、やはりゴロフキンは強かった。なぜ、倒せなかったのか? 村田は「ガードのすき間から入れてくるパンチ。総合力でやられた。技術が彼のほうが上だった」と語ったが、間近で見ていた拳四朗もゴロフキンの「技術」に圧倒されていた。

「とにかくゴロフキンはジャブがうまかった。それとジャブに威力あるんですよ。顔に入るから一瞬、集中力が切れちゃう。だから1発もらうと、すぐ2発目をもらったりする。あと、途中から足を使いだしました。距離を取ってジャブを突いて、突いて。あれでダメージがたまったんでしょう。そこから流れが変わっていきましたから」

 素人目には分かりづらいディフェンス力もあった。村田の猛攻を受けながら、微妙にパンチをかいくぐる。拳四朗は「ちゃんと村田さんのパンチを殺しているんですよ。実際にあまり効いていなかった。その証拠にゴロフキンの顔は最後までキレイでしたから」と分析した。

 敗れた村田には多くの拍手が送られた。帝拳ジム・本田明彦会長は「終わってお客さんが一人も帰らなかった」と喜んだが、その立役者はまぎれもなく村田だった。「ほかの試合も気持ちが入って見ていて疲れましたが、村田さんの試合は緊張感のレベルが違った。村田さんが打たれるたびに僕もウって力が入りましたから」(拳四朗)。まるで自分が戦っているかのように戦況を見つめていたという。

 1万5000人が熱狂した伝説のイベント。ボクシングファンだけでなく現役世界王者や関係者も我を忘れた「50分間」は後世に語り継がれるだろう。