3月末まで東京・帝国劇場で上演され、大反響だった舞台「千と千尋の神隠し」に、3人の新潟県出身者が出演している。13日の大阪公演(梅田芸術劇場)開幕へ向け、魚沼市出身のお笑い芸人、おばたのお兄さん(33)、村上市出身の武者真由(39)、新発田市出身の松之木天辺(47)のインタビューを全4回に分けてお届けする。【松尾幸之介・佐藤成】

 

-作品通して伝えたいことは

おばた ストーリーとは関係なく、人間の底力が本当に伝わる舞台です。人ってやっぱりすごいなって、僕は強く強く思っているので。そこは伝えたいですし、勝手に伝わると思いますね。

武者 ストーリーはジブリの作品で、ものすごくメッセージ性が強い。その中で、千尋と一緒にお客さんも育っていくというか。もやもやっとしているモノを抱えがちな世の中なんですけど、それをちょっと前向きに捉えられるように。見終わった後に、見る角度が変わるような舞台ですね。いろんなセリフに今でもハッとさせられることが多いです。

松之木 今回は千尋が名前を無くして千になって、というお話ですけど、名前を無くさないように生きなきゃなとあらためて思います。今は自分というものを持って生きるのが難しい世の中になっています。1人1人が千尋という名前を忘れずに生きていけば、きなくさい方向へ世界は動かなくて済むんじゃないか。自分を大事にする。自分の名前、生き方を大事にするという。この舞台を見て、自分を大切にしようとか、直接そういう風に思わないかもしれないけど、結果そうなってお家に帰っていただけたらと思っています。

-劇中では早着替えも大変だと聞いています

おばた 本当に着替えに限らず、みんなが「絶対無理」と心の中にとどまらず、口に出ていた箇所がもう挙げたらキリないくらいあります(笑い)。すごく感動するのが、人間って勝手に限界を決めちゃダメだなと、あらためて全員が感じたことだと思うんですよね。本当にプレビュー公演の時とかはみんな涙が出たんですけど、それって「本当にできちゃった」みたいな。そういう涙も本当にあるんですよ。無理だと思っていたから。全員の人としての精神力がひとつ強くなったのは共通して言えると思います。

松之木 稽古中はこの早替えは不可能なんじゃないというのが何カ所もあって。実際にやってみたら「あっ」みたいなところもたくさんあったんですけど、結果、できましたね。できちゃうからいけないんですけど(笑い)。

武者 できちゃう人たちだったからね。

おばた 今回は特にプリンシパルがアンサンブルに支えられているというか。アンサンブルの人たちって縁の下の力持ちとかってよく言われると思うんですけど、そういうことではなくて、あまりにアンサンブルの人たちが優秀すぎて、僕らが引っ張られている感覚が今回のカンパニーには本当にあって。それぐらい素晴らしいメンバーですね。

-13日からは大阪公演が開幕。その後、博多、札幌もめぐります。

おばた より多くの人に見てもらいたいですけど、すでになかなかチケットが手に入らないみたいで…。うれしい悲鳴ではありますね。

武者 夫と2人で芝居をしているんですけど、そのご縁で、よく大分県内で公演をやることがすごく多くて。博多公演では、また第2の故郷みたいな感じでみんな遊びに来てくれる。温泉もありますしね。楽しみです。

松之木 旅が大好きなので、旅公演大好き。ちょっと昔だったら、みんなで盛り上がって行けたんですけど、今回はストイックに自分を磨くというか。そういう時間も持てたらと思っています。

 

 

 

 

◆松之木天辺(まつのき・てっぺん) 1974年(昭49)4月28日、新潟県新発田市生まれ。98年オペラ劇団「オペラシアターこんにゃく座」入団。04年からコンテンポラリーダンスカンパニー「黒沢美香&ダンサーズ」などでダンサーとして活動。17年から香川県・小豆島を拠点に創作活動をスタート。ミュージカル「ラ・マンチャの男」など出演。178センチ、血液型B。

 

◆武者真由(むしゃ・まゆ) 1982年(昭57) 8月1日、新潟県村上市生まれ。昭和音楽大学声楽科卒業後、05年ミュージカル座入団。舞台を中心に活動。ミュージカル「ロイヤルホストクラブ」、ミュージカル「コンチェルト」、ミュージカルコメディー「ロイヤルホストクラブ」、舞台版「こちら葛飾区亀有公園前派出所」など出演。156センチ、血液型A。

 

◆おばたのお兄さん 1988年(昭63)6月5日、新潟県魚沼市生まれ。日本体育大学卒業。東京NSC18期生で、13年にお笑いコンビ、「ひので」としてデビュー。16年に解散後はピンで活動。小栗旬のモノマネで注目を集める。21年、ミュージカル「ウェイトレス」など出演。妻はフジテレビの山崎夕貴アナウンサー。166センチ、血液型B。