【インハイアウトロー 加藤伸一】久しぶりに楽しみな投手を見させてもらった。12日のロッテ戦(長崎)でプロ初先発し、6回途中2安打無失点に抑えた田上奏大投手(19)のことだ。

 ちょうどテレビ解説の仕事で投球を見させてもらったが、事前に評判を聞いて想像していたよりはるかに良かった。投手に転向したのは履正社高3年春で経験は浅いものの、最速155キロをマークした真っすぐの質が素晴らしく投げっぷりもいい。素材型で完成度の点ではまだまだな部分も多いとはいえ、将来的に大きく成長してくれれば、オリックス・山本由伸やロッテ・佐々木朗希のような投手になる可能性さえも感じた。

 育成選手から支配下登録にしたのは、一軍の戦力になるとの判断から。もちろん、今後も投げれば戦力になるだろう。ただ、今年最大のテーマは故障をさせずに大きく育てること。今回も登板後に出場選手登録を抹消しており、無理をさせることはないだろうが、それこそ同じ高卒2年目の例でいえば、昨季の佐々木朗希のようにスケジュールを組んで育てていってほしいと思う。

 いわゆる強化指定選手になる。フロントの考えもあるだろう。トレーニングによる体力強化やミニキャンプでの走り込みなどと並行して、例えば先発登板は一、二軍を通じて2週間に一度、そのうち一軍では月1度にしたりと組んでいく手もある。

 今季は千賀が順調にいけば海外FA権を取得する。かねてメジャー挑戦を掲げてきたエースの集大成となる投球も楽しみなところだが、その〝後釜候補〟として何とも楽しみな逸材が出てきた。(本紙評論家)