ロシア軍の黒海艦隊旗艦でウクライナ侵攻に参加したミサイル巡洋艦「モスクワ」の沈没を巡り、欧米メディアが「ミステリーだ」と騒いでいる。ウクライナ軍は同艦を巡航ミサイル「ネプチューン」で撃沈し、「乗組員全員が死亡した」と発表した。死亡者にはアントン・クプリン艦長も含まれていたはずだが、16日にロシア国防省がSNSで「ニコライ・エフメノフ海軍総司令官はミサイル巡洋艦モスクワの乗組員との会合を開催した」として、動画を公開。何とそこには同艦長の姿が確認できた…。

 ウクライナ側は、巡洋艦モスクワを14日にミサイルで撃沈し、乗組員全員が死亡したと発表。一方、ロシア側は同巡洋艦についてウクライナによる攻撃に触れず、艦内の火災で弾薬が爆発した後、同艦がえい航中に沈没したとした。乗組員は避難し、ウクライナ南部クリミア半島の港町セバストポリにたどり着いたという。

 巡洋艦の乗組員は510人とされるが、情報が入り乱れ、生存者数は不明。そんな中、ロシア国防省は、エフメノフ海軍総司令官がセバストポリで“生存者パレード”を行い、約150人の兵士たちをねぎらう26秒の動画を公開した。クプリン艦長の姿も確認できる。

 複数の欧米メディアが「ミステリーだ!“死んだ”艦長が“生存者”パレードに出席している」「ウクライナが死んだと発表したクプリン艦長が生きていた」と報じている。“生存者”のパレードというものの、動画の撮影時期は巡洋艦の沈没前か後か不明。

 巡洋艦モスクワとクプリン艦長は今回の戦争で注目されている。

 米メディアによると、ロシア軍の旗艦が戦時に沈没したのは、日露戦争における1905年の日本海海戦の際に、日本の連合艦隊が帝政ロシアのバルチック艦隊の旗艦を撃沈した時以来。モスクワは最大の軍艦の一つであり、“海軍の象徴”を沈められたロシア側の士気が大きく下がったとみられる。しかも、複数の核巡航ミサイルを搭載していたとされ、「核ミサイルごと沈んだのではないか?」とヨーロッパ中が不安になっているという。
 また、クプリン艦長はロシアのウクライナ侵攻初日である2月24日、黒海にあるズミイヌイ島(英語名・スネーク島)を砲撃する命令を出した人物だ。

 戦場ジャーナリストは「ウクライナのゼレンスキー大統領は2月24日、『ズミイヌイ島の国境警備隊員13人全員が降伏せず、英雄的な死を遂げた』と発表した。兵士が『ロシアの軍艦、くたばれ』と言ったとされ、この言葉はウクライナでスローガンとなり、今月、切手にもなった」と指摘する。

 一方、ロシアメディアは同日の時点で「ズミイヌイ島の兵士を捕虜にした」と報道。後日、ウクライナ海軍も「抵抗したが、弾薬が尽き、投降を余儀なくされた」と声明を出した。

「『くたばれ』と言ったウクライナ兵士はロシアの捕虜となったものの、捕虜交換で解放され、切手のお披露目式に出席しています。ゼレンスキー大統領もその切手を手にした写真を公開し、士気を高めようとしている。最初から情報戦が繰り広げられた島なんです。その島への攻撃を命じたとされるクプリン艦長の生死も情報戦の一環ということでしょう」(同)

 ロシア国防省は17日、包囲攻撃を続けるウクライナ南東部の要衝マリウポリで、製鉄所構内に立てこもったウクライナ側部隊に武器を捨てて降伏するよう要求した。ウクライナ側は応じず、同省は「これ以上の抵抗を続ければ全滅させる」と最後通告を行った。首都近郊などへのミサイル攻撃も継続した。ゼレンスキー大統領は16日、「部隊が全滅すれば交渉に終止符を打つ」と述べ、停戦交渉打ち切りも辞さない考えを表明した。
 戦争は終わらないのか…。