北京五輪フィギュアスケート女子銀メダルのアレクサンドラ・トルソワ(17=ロシア)が人類初の5回転ジャンプ挑戦を表明したことが波紋を広げている。母国ロシアなどでは元選手や指導者から否定的な意見が噴出。フィギュア界ではジャンプの高難度化が進んでいるとはいえ〝無謀な挑戦〟と見る向きも少なくない。

 5回転となれば、北京五輪で羽生結弦(ANA)が挑んだクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)より半回転も多い。ただ、かつて宇野昌磨(トヨタ自動車)が「4回転半はボクに向いていない」と5回転トーループ挑戦を示唆したように、前向きに踏み切るアクセルに比べて、他の5回転ジャンプのほうが成功しやすいと分析する専門家がいることも確かだ。

 実際のところ、5回転ジャンプは可能なのか。元全日本選手権4連覇王者の小川勝氏は「難しいでしょう。トルソワ選手の4回転を見る限り、あと1回転できるかは疑問。そもそもケガをするリスクがある」と指摘。その上で、仮に5回転を跳べたとしても、その価値に疑問符をつけた。

「3回転から4回転へ時代が移った時もそうですが、順序立てずに技術を1つ飛ばすと評価が薄くなる。全ジャンプをこなせば審判員も認めざるを得ず、それが高評価につながると思っています」

 5回転を跳ぶ前に、まずは4回転の充実を主張する小川氏は今の「ジャンプ至上主義」の流れに対しても異を唱える。

「ロビン・カズンズ(英国)、スコット・ハミルトン(米国)、アレクサンドル・ファデーエフ(旧ソ連)のように、ジャンプ以外で感動を与えてきた選手をたくさん見てきた。だからジャンプさえ跳べば点数が出る風潮には賛同できません」

 果たして〝トルソワ先輩〟は懐疑的な見方を押しのけて本当に5回転に挑むのか。今後の動向から目が離せない。