ブルージェイズの菊池雄星投手(30)の投球に対する判定シーンを巡り、米国内で論争が沸き起こっている。

 19日(日本時間20日)の敵地レッドソックス戦に先発した際、菊池が2回に「指を舐めた」として一塁塁審のエンジェル・ヘルナンデス氏(60)に違反行為を指摘され、フルカウントとなっていた相手打者は1ボール宣告で四球になる一幕があった。この判定にツイッターなどSNS上でファンの間は「バカバカしい判定」「また誤審」「あの動きはそう見られても仕方がない」などと賛否両論に分かれているからだ。

 菊池にとってMLB移籍以来、ボールに異物を付けたとみなされる違反行為「スピッドボール」の宣告は初めて。だが、何よりも話題の的となっているのは判定を下した主のヘルナンデス氏がMLB内で数々の〝悪評伝説〟を作り上げてしまっているからに他ならない。

 ヘルナンデス氏はMLBで30年以上の審判歴を誇るものの、米国内では誤審が非常に多いことでも広く知られている。2010年の時点でも米スポーツ専門局「ESPN」から〝最悪の審判〟と評され、その7年後の17年には当時タイガース所属のイアン・キンズラーから「彼は別の仕事を探すべき」との暴言まで向けられたこともあった。14年からMLBで導入されたチャレンジ方式でも同氏の判定は数多く対象とされ、覆っている。こうした背景もあって「またしてもヘルナンデス氏がやらかしたのではないか」とする声が、SNS上を中心に飛び交う流れへとつながっているようだ。

 だが、米メディアは「間違っていない」とほぼ一貫してヘルナンデス氏の正当性を強調している。「ニューヨークポスト」(電子版)は「キクチがマウンドに上がり、3―2の投球をしようとしたとき、マウンド上に立ったまま、人さし指と中指を素早くなめた。そしてボールを握ると、一塁塁審のヘルナンデス氏はマルティネスに無条件で4つ目のボールを宣告した。ヘルナンデス氏は、これまで何度も判定を誤り、非難を浴びてきたが、今回は正しい判定を下した」と報道。「MLB.com」(電子版)も同日の記事で「(違反行為を)見逃さなかったことを賞賛されるべき判定」と同様の見解を示している。

 この日の菊池は5回1失点と好投しながらも今季初勝利はまたしてもお預け。それでもモントーヨ監督からは試合後「彼のことは、とてもいいと思っている。見ていて気持ちよかった」と絶賛され、現地メディアも投球内容については「まさにブルージェイズが見たかったもの」(「MLB.com」)と賞賛している。次回3度目の先発登板に向け、気持ちを切り替えたい。