二刀流右腕が新たな武器で全米を震撼させた。エンゼルスの大谷翔平投手(27)は20日(日本時間21日)のアストロズ戦に「1番・DH兼投手」で出場し、投手で6回一死までパーフェクトの快投を披露。打者でも2点二塁打を含む2安打2打点で今季初勝利をセルフアシストした。圧巻だったのは6者連続を含むメジャー自己最多タイ12奪三振の2022年版SHO―TIMEで、これまでのスライダーから進化した“破壊ダー”がうなりを上げた。

 大記録には手が届かなかったものの、二刀流右腕は投打で世界を驚かせた。まずは打者で四球と左翼フェンス直撃の2点二塁打で初回一挙6点の猛攻撃を演出。先発投手が登板前に2回打席に立つのは1900年以降のメジャーでは史上初めてのことだった。

 初回のマウンドに上がった大谷のユニホームは既に泥だらけ。1打席目の四球での出塁時、けん制球にヘッドスライディングで帰塁する際についた“勲章”でもあった。十分すぎるほどの暖機運転を終えていた大谷は快投ショーをスタート。いきなり2者連続の空振り三振で立ち上がると、3回先頭のグッドラムから4回を投げ終わるまでメジャーでは自身初の6者連続三振と高出力エンジンがうなりを上げた。

 投げては6回一死までパーフェクト。奪った三振はメジャー自己最多の12を数えた。快投劇の軸となったのは投球の43%を占めたスライダーだ。過去2試合では28・7%だったが「相手が何が一番打てないかを考えて投げた」と多投。落差の大きいスプリットも効果を発揮した。

 右ヒジの位置をやや下げたフォームから繰り出されたスライダーは、これまでとは別物だった。メジャー公式のデータ解析ツールの「スタットキャスト」によると、その横変化は最大20インチ(50・8センチ)に到達。ホームベースの横幅17インチ(43・2センチ)を上回る切れ味だった。大谷の投球を「歴史的な夜」と称したCNNは「大谷は破壊的なスライダーを35球投げた」と伝え、スポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」はスプリットも交えた投球内容に「最初の20スイングでバットに当たったのは6度だけ。アンタッチャブルだった」と驚きを隠せない様子だった。打者にとってはアニメさながらの“消える魔球”だったに違いない。

 残念ながら6回一死からカストロに中前打されて完全投球はストップ。この回を投げ切って目安の85球に迫る81球だったこともあり、投手としての役目を終えた。大谷は完全試合も「頭にはあった」そうで「球数が多かったので9回まではいかなかったと思う」と振り返ったが、マドン監督は「サイ・ヤング賞(最優秀投手賞)の候補になってもおかしくない」と称賛した上で、こうも言った。

「球数は関係ない。完全試合が続いていたら投げていた。選手の快挙を邪魔することは絶対にない」

 大谷は同じ岩手県出身のロッテ・佐々木朗希投手(20)が完全試合を達成し、次の登板でも8回を完璧に抑えたことについて「2試合連続で何イニングもゼロに抑えるだけでも難しいが、ヒットを打たれないのはそれだけ素晴らしいボールを投げているということ。米国でもニュースが流れていてみんな知っている。もっと頑張ってもらいたいし、自分も励みにしたい」と話した。完全試合で先輩の意地を見せつける日も、そう遠くないかもしれない。