「カモン カモン」(公開中) 全米を回って子どもにインタビューするラジオジャーナリストが、妹から頼まれて突然、9歳のおいの面倒を見ることになる。独身で子どもの世話などしたことがない上、おいはつかみどころのない“不思議ちゃん”。戸惑いつつも仕事に同行させ、人として向き合おうとする中で、互いがかけがえのない存在となる。

主演のホアキン・フェニックスといえば、バットマンの宿敵ジョーカーの誕生を描いた19年「ジョーカー」での怪演でアカデミー賞主演男優賞を獲得した。血しぶきが飛び散る、凄惨(せいさん)な殺人シーンを演じた作品の次に、こんなにもハートフルな作品を選ぶ、振れ幅の大きさと懐の深さも、また魅力だろう。

主人公のジョニーがインタビューするシーンは、実際にフェニックスが9~14歳の子どもを取材した生の声が使われた。「ジョーカー」が、17歳以下は親の付き添いがないと鑑賞できないR指定作品だったこともあり、インタビュアーがスター俳優だと気付かなかった子どももいたという。ドキュメンタリーと言って差し支えない生々しさが、アクセントを加えている。

“子はかすがい”という言葉の意味を、ジョニーと同じ独身者にも感じさせてくれるであろう、おいのジェシーを演じたウディ・ノーマンの好演も忘れてはいけない。今、愛されたい、癒やされたい人必見の1本だ。【村上幸将】

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