これも〝キングロス〟の影響か――。体操の個人総合で争う全日本選手権男子決勝(24日、東京体育館)は東京五輪2冠の橋本大輝(20=順大)が連覇を達成。現役引退した内村航平氏(33)からバトンを受けた新エースが期待に応えた。一方で、体操界全体の課題も浮き彫りとなった。会場内は空席が目立ち、お世辞にも盛況とは言えない状況だったからだ。

 東京五輪が終わり、内村氏も引退。さらにコロナ禍と〝負の要素〟が重なったとはいえ、男子決勝の観衆1294人は寂しい数字だ。前日(23日)の女子決勝に至っては790人にとどまり、3月に同会場で行われた内村氏の引退イベント(約6500人)とは雲泥の差。内村氏の全盛期を知る関係者は「ロンドンやリオ五輪のころはたくさんのお客さんが入っていたが、今大会はチーム関係者やスタッフがほとんど。コロナの影響もあるけど、広報戦略を考えないといけない」と厳しい現実を受け止めた。

 世代交代が進む体操界は昨年から今年にかけて内村氏、リオ五輪団体金メダルの白井健三氏、東京五輪銅メダルの村上茉愛氏ら人気選手が相次いで引退。ニューヒーロー誕生を待望する声が上がる一方で、日本協会に根本的な改革を求める意見も根強い。

「米国では競技の合間に子供たちをフロアに呼び入れて器具に触れさせるサービスを行ったり、選手がサイン会を開いている。彼らに『試合前じゃないのか?』と聞くと『これが大事なんだ』と言っていた。日本もどんどん新しい発想を取り入れ、お客さんが来場して良かったと思える付加価値を与えないといけない」(協会関係者)

 現在、スポーツ界はスポンサー離れが進み、資金面でも試練は続く。そんな今だからこそ、積極策に転じる必要がありそうだ。