先を見据えた一手となるか。巨人は28日のDeNA戦(横浜)、2年目・山崎伊織投手(23)が6回2安打無失点の好投で7―0でプロ初勝利をマーク。チームは2連勝で両リーグ最速の20勝に到達した。そんな好調・巨人が「常勝軍団」構築を目指し、6年ぶりに「キューバルート」を復活させることが判明。かつては「苦い思い出」とともに撤退しているが、その狙いとは…。

 投打がかみ合った。初回、4番・岡本和が3戦連発となる9号2ランで先発・山崎伊を強力援護。右腕は6回無失点の好投でプロ初勝利を手にした。

 これで2位・広島に3・5ゲーム差。東海大後輩の初白星に原監督は「精度も、スピードも、非常に良いときに近くなっていますね。ナイスピッチングですね」と笑顔。両リーグ最速20勝には「あ、そうですか。そこは全然意識してないんですけど。あの、まだまだ、まだまだ、ですね」と表情を引き締めた。

 快進撃を続けるなか、巨人が水面下で動いた。4月上旬、巨人幹部と「キューバスポーツ・体育・レクリエーション庁(INDER)」のラウル・フォルネス副大臣が会談を行った。

「球団は現在、即戦力助っ人と並行して発掘・育成で外国人を育てる方針で動いている。去年ドミニカから若いティマ(17)、デラクルーズ(17)を育成で獲得したが、その流れにキューバも加える。外国人については先を見据えてメジャーから獲得するのではなく、1Aあたりから獲得して育てることにシフトしている」と球団関係者は6年ぶりとなるキューバルート再開を明かした。

 現在、日本球界ではデスパイネ、モイネロ(ともにソフトバンク)、R・マルティネス(中日)らキューバ国内リーグ組が活躍中。同国選手は亡命しない限りメジャーではプレーできないため、INDERが日本の派遣先を決めている。

 巨人では長嶋茂雄終身名誉監督との関係から2014年に第1号として04年アテネ五輪金の〝キューバの至宝〟セペダを獲得。だがピークは過ぎており、1年目は52試合で6本塁打、15年も20試合0本塁打と結果を残せなかった。同じ14年にロッテはデスパイネ(現ソフトバンク)、DeNAはグリエル(現アストロズ)を獲得しており、〝ハズれ〟の感は否めなかった。

 さらに巨人にキューバ撤退を決断させたのが16年のホセ・ガルシア(現レンジャーズ)の亡命騒動だった。来日直後からガルシアは「寮の食事が合わない」とやる気を見せず、わずか4か月で契約解除になると、帰国途中にフランスで亡命した。同じく巨人を自由契約となった中継ぎのエクトル・メンドーサ(元カージナルス傘下)も同年10月、ガルシアの後に続いた。

 ガルシアは18年にカージナルスと契約し、20年にレンジャーズに移籍。昨季は31本塁打を放つなど活躍している。「亡命ありき」と疑われかねない事態に、別の巨人関係者は「ウチはキューバとはあの一件から距離を置いた」と振り返る。

 選手に魅力はあるもののリスクも大きい。交流再開にはキューバ政府によるしっかりとした保証が必要となる。「選手の亡命についてキューバ政府も近年は真剣に問題として捉えています。今回、球団は『契約を守らせる。もう亡命はさせない』と同国政府から約束してもらったそうです」(同関係者)。

 キューバ選手の育成が順調に進めば、将来的に主力級選手派遣にも道が開ける。一度は巨人が煮え湯を飲まされた〝鬼門〟。金鉱脈を発見できれば、チームの将来にとって大きな力となるが果たして…。