脳科学者・中野信子氏と国際政治学者・三浦瑠麗氏が不倫をテーマにした対談本「不倫と正義」(新潮社)を出版した。人はなぜ不倫をし、世間はバッシングをするのか。中野氏と三浦氏がお互いの専門分野の観点から、時に女性目線で不倫について語り尽くした。さらに一夫多妻制にぬか喜びする男、残念な男性を2人がジャッジ。怖いけど気になる女子トークをのぞいてみた。

 ――なぜ不倫をする

 中野 そもそもするようにできてる。1人の相手だけを愛するように脳ができてないんです。

 ――脳科学で説明しても理解されづらい

 中野 されないでしょうね(笑い)。人間のあるべき姿と実態にかなり乖離(かいり)がある。多くの人は実態を怖がって見たがらない。それをちゃんと見ましょうよというのが今回の試み。不倫に関して三浦さんと意見が一致する部分があったので、ぜひ掘り下げたいと思って。

 ――2人に共通する「不倫はそんなに悪いものではない」の真意は

 三浦 そんなに悪いことだったら、なぜ繰り返し小説とかオペラの題材になってきたんだろう。

 中野 ドラマの「昼顔」とか、みんな好きなのに。なんで実在の人物が不倫するのはダメなんだろう。

 三浦 不倫報道というものについて「いかがなものか」と言うと、「お前も不倫されろ」みたいなことを言われる。

 中野 あはは。本当に言われる。先ほど言った通り、一夫一婦型にできてない。そうじゃない形のものを社会全体でバッシングする構造は大きな疑問がある。そういう問題提起をした時に二次的な反応として男性がすごい快哉を叫ぶ。

 三浦 やった! 中野信子が不倫を肯定したみたいな(笑い)。

 中野 そうそう。なんでこの人たちは無条件に自分が一夫多妻側で一夫ゼロ妻の側に自分が行くことをみじんも考えないのかなと(笑い)。

 ――耳が痛いです。仕事柄、(共演の)明石家さんまさん、松本人志さんのような魅力的な男性に出会う機会が多い

 中野 さんまさんはすごく多動的。ずっとしゃべってる、本当に(笑い)。動いてもいるのでドーパミンの要求量が高い人なんだなって。刺激が足りないと刺激を自分から求めていくタイプ。

 ――本の中で松本さんを好きなタイプだと

 三浦 好きなタイプじゃなくて、嫌いじゃない。嫌だったらそもそも共演していないということを言った。男性としてどうこうじゃなくて。松本さんは繊細な人なので、雑に話ができないというか、本気で話さないといけない感がある。

 ――お2人が結婚相手を選んだポイントは

 中野 宇宙人的な人なので一緒に住めるアートと思って。自分の世界の範囲外でちゃんと命をつないでいる人がいたという驚きを毎回与えてくれる。すごく楽しいと思って、一緒にいることにしました。

 三浦 育った背景も所得の感じも似てて。そういう意味で幼なじみ感がすごくあったのと、バカじゃなかったのがめちゃくちゃデカい。バカなのは無理なんですよ(笑い)。

 中野 無理だよね。

 ――バカというのは

 三浦 総合力です。東大とかそういう話ではないです。人間として間違ってないとか大事だし。

 中野 とてもよく分かります。自分しか頭のいい人がいないと思っている人はバカだと思うんです。

 三浦 私は夫をかわいがってて、そこは中野さんと共通するところだと思う。

 中野 猫の延長みたいなところがありますね。

 三浦 そうそう。本物の猫が2匹来ちゃったんで、ちょっと座を追われつつある(笑い)。でも周りが見えてるというのが基本としてあって。後はやっぱり深い意見を言ってくれるとか。人間を見抜く能力がある人で自分が見えてない人っていないから(笑い)。洞察力ですかね。

 中野 そこはあるな~。

【対談を終えて】 
 中野は「三浦さんと仕事してよかったなって。自分が理で考えてた所にちゃんと人間らしい機微を組み込むという視点をもたらしてくれると思う。現実に動いてる世界と理の世界をちゃんとかみ合わせる作業をできたなと思いました。理の世界に愛がしみてくる感じ」と話した。

 三浦も「中野さんのいやなところ1つもないんですよ。お互い違う背景で違うことを言ってたりするんですけど。お互いにやり取りをしながら、かと言って1つの結論に押し詰めることなく話が展開する面白さってあると思うんですよね。自分で分析するだけじゃなくてちゃんと他分野の知見をもらいながらというのはすごいよかったなぁ」とまだまだ話し足りない様子だった。

☆なかの・のぶこ 1975年生まれ。東京都出身。東京大学大学院脳神経医学専攻博士課程修了。脳科学者、医学博士、東日本国際大学特任教授。

☆みうら・るり 1980年生まれ。神奈川県出身。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。東京大学政策ビジョン研究センター講師を経て山猫総合研究所代表取締役。国際政治学者。