UFC274:オリベイラVSゲイジーは「間違いなく盛り上がる」 “世界のTK”高阪剛が見どころ語る

(左から)シャールズ・オリベイラ選手、ジャスティン・ゲイジー選手、ローズ・ナマユナス選手、カーラ・エスパルザ選手/Getty Images
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(左から)シャールズ・オリベイラ選手、ジャスティン・ゲイジー選手、ローズ・ナマユナス選手、カーラ・エスパルザ選手/Getty Images

 世界最高峰の総合格闘技イベント「UFC274」が現地時間の5月7日、米アリゾナ州フェニックスで行われる。メインイベントは、ライト級王者シャールズ・オリベイラ選手が、ジャスティン・ゲイジー選手を挑戦者に迎える、2回目の防衛戦だ。このほか、女子ストロー級王者ローズ・ナマユナス選手が、2014年12月に敗れている初代女子ストロー級王者カーラ・エスパルザ選手を相手に、2回目の防衛戦を行う。

ウナギノボリ

 2試合の見どころを、WOWOWの「UFC-究極格闘技-」解説者で、“世界のTK”こと高阪剛さんが語った。

 --「UFC274」のメインイベントは、UFC最激戦区と言ってもいいライト級のタイトルマッチ、オリベイラVSゲイジーが組まれました。これは楽しみな一戦ですね。

 これはもう間違いなく盛り上がるでしょうね。

 --王者オリベイラはUFCの最多フィニッシュ勝利(18勝)、最多一本勝ち(15勝)、最多パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト(12回)を記録していて、挑戦者ゲイジーもファイト・オブ・ザ・ナイト6回獲得の名勝負男ですからね。

 ただ、これは特にオリベイラに言えることなんですけど、なぜ毎回試合が盛り上がるかというと、相手の攻撃をもらってしまうことが結構あるんですよね。たとえば、前回のダスティン・ポワリエ戦にしても、その前のマイケル・チャンドラー戦にしても、効かされるシーンがあって。

 --チャンドラー戦ではダウンを奪われ、TKO寸前まで追い込まれながらの逆転勝ちでしたね。攻撃をもらってしまうからこそ、図らずも“激闘”になってしまう、と。

 以前のオリベイラは寝技にすごく自信があるが故に、寝技になったときに力を使いすぎて、しのがれてスタンドに戻ったときにガス欠状態で被弾して負けることもあったんです。その後、打撃を磨いてスタンドに重きを置くようになったので、打撃のつばぜり合いをすることでどうしても被弾するので、殴り合いの激闘になっているのかなと。だからある意味、そこの部分に関してはちょっと危なっかしいというか、付け入る部分を残しつつ頂点に立ったチャンピオンですね。

 --でも、付け入る隙(すき)がありそうなのに、UFC最激戦区のライト級でトップランカーに勝ち続けて現在10連勝中なんですよね。

 オリベイラの面白いところは、そこなんですよ。オリベイラと対戦した選手は、この前のポワリエもそうですけど、試合中「いける!」と思う瞬間が、必ずと言っていいほどあるんじゃないかと思うんですよ。ただ、「いける!」と思って攻めたとき、逆にその隙を突かれて、結果的にサブミッションを極められたり、KOされたりしている。

 --相手が「チャンスだ!」と思って向かってきてくれたときこそ、実はオリベイラにとってのチャンスになっていると。

 そういうことが起こってるんじゃないかと思うんですよね。相手がチャンスだと思って前に出たところにカウンター入れられたり、グラウンドで首取られたりね。だからオリベイラの“付け入る隙”が、実はわなだったり落とし穴だったりするんですよ。

 --なるほど。では、ゲイジーは必ず打撃でフィニッシュを狙ってくる選手ですから、ポワリエやチャンドラー同様、そのわなにハメやすいタイプかもしれないですね。

 だからこそゲイジーは、ポワリエやチャンドラーと同じ失敗を繰り返さないための戦い方が問われてくると思うんですね。ゲイジーはオリベイラより10センチほどリーチが短いので、至近距離で打撃が交錯するような展開を望むと思う。ただ、仮にゲイジーがオリベイラを打撃で効かせていたところで、その次の手をどうするのかが悩みどころかもしれないですね。例えば、打撃で効かせてフラッシュダウンさせたとして、そこからオリベイラ相手に寝技で勝負するのかどうか。オリベイラは下からの極めがものすごく強いので、上になってパウンドを落とすのも危険ですからね。だからその展開になったとき、はたしてゲイジーがどうするのか自分も興味がありますね。

 --実際、前回対戦したポワリエは、グラウンドで上になりながらパウンドにいったところでスイープされて逆転されていますしね。

 ゲイジーが勝つためには、まずパンチで効かせなきゃいけないというのが絶対にあると思うんですよ。カーフキックなど足技もやりますけど、オリベイラも足が利くタイプだから、なかなか通用しないことが考えられる。では、どうするかを考えたとき、一つイメージできるのはクリンチした状態でのパンチとか、至近距離からのアッパー。これは強烈で、しかも分かりづらい打ち方をするので、ひとつの武器になるんじゃないかなと思うんですよ。抱えた状態で、完全に効くまでパンチを連打すると。

 --先日、他団体で秋山成勲選手が青木真也選手にやったクリンチアッパーみたいな形ですね。

 ああいうのが有効だと思うんですけど、ただクリンチで抱えているということは、その抱えた腕をオリベイラが取りにくることも考えられる。飛びつき三角締めや飛びつき腕十字固めという技も得意ですからね。そういうことを考えると、ゲイジーはどう戦うのかなと。すごく興味が湧きますよ。

 --ゲイジー陣営がどうやってこの難問を攻略しようとしているのか、と。

 判定勝ちを頭に入れてるとしたら、フラッシュダウンさせても深追いせずに離れて、ラウンドを確実に取っていくのを繰り返すというのも手ですけど、ゲイジーはおそらくそれを望まないと思うんですよね。

 --やりすぎなくらい倒し切ることが信条のファイターですからね。

 そうすると倒しきるためにはどうしたらいいのか。オリベイラは、隙があるように見えて、わなや落とし穴が張り巡らされた不思議な強さを持ったチャンピオンなので、ゲイジーがその攻略法を見つけることができるかどうかがポイントだと思いますね。

 --続いてセミ・メインイベントは、ナマユナスVSエスパルザの女子ストロー級タイトルマッチ。ストロー級も女子最激戦区と言っていいかと思いますが、王者ナマユナスはライバルのジャン・ウェイリー、ヨアナ・イェンジェイチックを2回ずつ倒して、頭一つ抜けた存在になりつつありますね。

 そうですね。安定してきた感がありますね。

 --ナマユナスの快進撃の要因はどう見ていますか?

 ナマユナスもオリベイラと同じく、もともと組みが強いグラップラーだった選手が、打撃を磨いたタイプですよね。相手からすると当然、組技を警戒しなければならないのに、打撃レベルがかなり高いというのが、やりづらくしている要因だと思います。その打撃自体、自分からプレッシャーをかけていくんですよね。相手からすると、そのプレッシャーをかわすためには、そこにタックルを合わせたり組みついたりという選択肢が当然あると思うんですよ。でも「組んだらナマユナスは寝技が強いしな」という思いがあるから、そこで相手に迷いが生じるわけですね。例えばジャン・ウェイリーなんかは、スタンドでプレッシャーをかけられて、タックルやローキックを警戒して意識が下に向いたところでハイキックを入れられたり。イェンジェイチックもそれで顔面に連打をもらってますよね。

 --だからこそ、ウェイリー、イェンジェイチックというトップストライカーが、本来グラップラーだったナマユナスにKOされたわけですね。ただ、今回の挑戦者エスパルザは完全にレスラーです。

 がんがんタックルに入ってくるタイプですよね。だから今回、エスパルザ側からするとタックルが取れる距離を早く見つけることと、その設定ができる状況を作ることが大事だと思うんですよ。そのためには相手を不用意に出てこさせるとか、自分からプレッシャーをかけて足を止めさせるとか、ケージ際まで追い込んだりする必要が出てきますけど、それをナマユナス相手にできるかどうかですね。

 --エスパルザは、ナマユナスのグラップリングを怖がらない相手でもあります。

 なぜ極めが強い相手に対してもタックルにいけるかというと、エスパルザは倒してトップポジションを取ったとき、下手に寝技をやらないんですよね。トップキープに専念して、そこから極めにいったり、下手したらパスガードも狙わずに、そこからパウンドとヒジを落としていく。そのパウンドとヒジが強いし、要はつけるだけなので隙が生まれにくいんですよ。

 --そうして確実にラウンドを取りにいくと。

 そういうシンプルな試合運びをするので、おそらくナマユナス相手にもタックルを仕掛けていくと思うんですけど。要はそのタックルが成功するかどうかですね。逆に言うとテイクダウンを奪えなかったら、厳しい展開を強いられると思います。また、テイクダウンが取れたとしても、エスパルザはトップキープをしようとして立たれたとき、結構消耗していることが多いんですよね。ナマユナスは寝技から立つ動きとか、下からサブミッションを仕掛けながらスタンドに戻す技術をいろいろ持っているので、しっかりとトップキープしてドミネートできるかですね。

 --ナマユナスにとってエスパルザは、UFCデビュー戦である初代ストロー級王者決定戦で敗れた相手ですから、成長ぶりを証明したいところです。

 だからエスパルザ相手だからこそ見られる、ナマユナスの技術の幅の広さみたいなものが見られるかもしれないし、自分はそこに期待していますね。

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 試合の模様は「生中継!UFC-究極格闘技- UFC274 in アリゾナ ライト級オリベイラVSゲイジー、女子ストロー級ナマユナス防衛戦!」と題し、5月8日午前11時からWOWOWライブ・WOWOWオンデマンドで生中継・同時配信される。

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