アスリートを虐待から守る非営利団体「米国セーフスポーツセンター」は2日(日本時間3日)、フィギュアスケート女子選手への身体的虐待の疑惑をかけられていた米国人コーチで1988年カルガリー五輪ペア銅メダルのピーター・オペガード氏(62)に1か月の停職処分を下した。米国フィギュアスケート協会の公式サイトでも公表された。

 米メディア「USAトゥデー」によると、オペガード氏は2013年、当時15歳だったペア女子スケーターのジェシカ・ファンドさんのトレーニング指導中に激怒し、腕に噛みついたとされる。ジェシカさんは同メディアの取材に対し「彼はジャンプの着地位置を示すために氷の上で私をサポートしていました。彼は両手で私を抱きかかえ、身を乗り出して私の右の二の腕あたりを噛みつきました」と証言している。

 その後、ジェシカさんは腕に歯形が残った状態で帰宅。母・ローレルさんは腕に噛まれた跡を確認し、あざは約1週間も消えなかったという。ジェシカさんは母と話し合い、練習への影響などを考慮した結果、この件を協会に報告しないことを決めた。オペガード氏の妻は1998年長野五輪銀メダルのミシェル・クワンさんの姉、カレン・クワンさんであり、家族への影響も考えて踏みとどまったという。

 一方、米国セーフスポーツセンターが2020年7月に始めた調査によると、オペガード氏は05~18年に指導していた米カリフォルニア州のイーストウエスト・アイスパレスで、スケーターに向かってお湯やコーヒーを投げつけた疑惑も浮上。目撃した2人の関係者(報復を恐れて匿名を希望)の証言などによって事実が判明したという。

 米国内では過去にもコーチによる性的虐待などが取りざたされている。同センターは米国体操界の大規模な性的虐待事件を受けて2017年に設立された。