歌手由紀さおり(75)が12日に東京・赤坂のライブハウス「MZES東京」でディナーショー「『新しいわたし』ライブ」を開催する。

歌手生活53年。輝かしいキャリアに安住せず、常に挑戦を忘れない75歳のエンターテイナーは今回、三味線をライブで初披露する。

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由紀は「人と同じようなことをやっても意味がないでしょ。三味線は奥が深くて、まだまだ修練をしないと自分の本当の『芸』にはならないと思いますがトライします。どんなふうに融合できるかしら!」と本番を楽しみにしている。

稽古は17年から始めた。19年に行った一人芝居「夢の花」でも披露をしたが、この時は“三味線を弾く芸者役”として。今回は本業の歌手として初めてステージに立ち、ライブタイトルにある“新しい由紀さおり”の新境地を見せる。

これまでも「人と同じでない道」を歩んできた。69年のデビュー曲「夜明けのスキャット」がいきなりのミリオンセールス。姉の安田祥子と86年に始めた童謡コンサートは今年で37年目を迎える。2011年に米ジャズオーケストラとコラボをしたアルバム「1969」は世界50カ国以上でヒット。「SAORI YUKI」の名と日本の歌謡曲を世界中に知らしめた。

俳優としても83年の映画「家族ゲーム」で助演女優賞を受賞。昨年は初の主演映画「ブルーヘブンを君に」が、74歳の挑戦として大きな話題を呼んだ。

チャレンジをし続けるエネルギーの源は何なのか? 改めて問うと「常に前を向いている自分でいたいから」と返ってきた。「手紙」「恋文」など多数のヒット曲があっても「それらは確かに過去の財産だけど、それだけじゃない。今の自分自身も楽しみたいし、この年になっても、まだまだやれることはあるんじゃないかな。いつかは命尽きる日が来るわけだけど、前を向いている私で終わりたいという気持ちです」

亡き母の言葉が脳裏に浮かぶ。「お客さまはお金を払って来ていただいている。3倍返しとはいかなくても、それ以上のものを持って帰ってもらわないと意味がないんじゃないの?」。だから常に全力。妥協はしない。

歌手生活53年。現在も歌声の透明感と伸び、童謡で鍛えた歌詞を鮮明に伝える技術は群を抜いている。天賦の才を常に磨き、座右の銘「努力に勝る天才なし」を実践する由紀の挑戦は続く。【松本久】

◆由紀さおり 本名・安田章子。1946年(昭21)11月13日生まれ、群馬県桐生市出身。小学生の時から「ひばり児童合唱団」で童謡歌手として活躍。69年に「夜明けのスキャット」でデビュー。歌手、女優、司会、バラエティーなどで幅広く活動。CMソングは300曲以上歌唱。12年に紫綬褒章、19年に旭日小綬章。趣味は陶芸、日舞。

○…7月6日に新曲「初めての今日を」をCD発売する。人生100年時代をどう生きるかをテーマにした楽曲。熟年層に対し、未来をあきらめることなく、楽しく前向きに生きようと呼び掛けるメッセージソングになっている。6月11日に先行デジタル配信を予定。