7月の世界選手権(米オレゴン州)の日本代表選考会を兼ねた1万メートルの日本選手権(7日、東京・国立競技場)では、女子のレースから目が離せない。

 昨夏の東京五輪同種目で7位入賞の広中璃梨佳(21=日本郵政グループ)や五島莉乃(24=資生堂)、小林成美(名城大4年)といった参加標準記録突破者が名を連ねており、陸上関係者からは「ハイレベルな戦いが見られそう」と期待の声が高まる中、一番の注目は昨年12月に日本歴代2位となる30分45秒21を記録した不破聖衣来(拓大2年)だ。

 昨年10月の全日本大学女子駅伝の5区(9・2キロ)で従来の区間記録を1分以上更新する28分00秒をマークすると、その後はレースに出場するたびに好走を見せてきた。しかし、1月の全国都道府県対抗女子駅伝後に負傷。強行出場した4月の日本学生個人選手権の5000メートルでは最下位に沈み、各方面から「さすがに日本選手権は厳しいのでは」との意見が飛び交った。

 ただ、この結果は想定内だった。かねて五十嵐監督と不破は「世界選手権出場」を直近の目標に掲げてきた。4月のレースはあくまで「試合勘」を養うための予行練習。先頭集団に1周遅れを喫しても、1キロ3分30秒のペースを最後まで守り切った。この不破の姿勢に、ある実業団ランナーは「本当にすごい。私にはマネできない」と舌を巻くほど。先を見据えているからこそ、どんなときもマイペースを貫けるのだ。

 当然、広中などの実力者も黙っているはずはないが、参加標準記録を切っている不破は、3位以内に入れば世界選手権の代表に決まる。果たして当日はどんな走りを披露してくれるのだろうか。