3年ぶりに新型コロナウイルスに伴う行動制限なしでのゴールデンウイーク(GW)は、各地の有名観光地で人出が爆発的に増えた。うっぷんを晴らすように大勢の人が長期連休を楽しんだ。GW前に小池百合子知事が警戒感を表明していた東京都も、数字の上では今週の感染者数は前の週のほぼ半減。ついには「脱マスク」論まで出てきた。

 2020年に新型コロナウイルスの世界的流行が始まってから3年、ようやく行動制限なしのGWを迎えたとあって、期間中の各地の人出は大幅に増えた。特に北海道や沖縄といった観光地で人出は急増。これまでのコロナ禍で冷え込んでいた全国の観光業関係者たちを安心させた。

 人出の急増は高速道路の渋滞情報にも表れ、東北道や関越道では40キロ以上の渋滞、東名高速などでも30キロ以上の渋滞が発生。鉄道では新幹線に満席の便が多発し、航空各社の予約状況もコロナ前と同水準となるなど、コロナ禍では聞くことのなかった“景気のいい”話が飛び交っている。

 また、5日の東京都の新規感染者数が2320人となるなど、今週は前の週の同じ曜日から著しく減少している。これを受けて「脱マスク論」も出始めるなど、もはやコロナ禍は過ぎ去ったという雰囲気だ。

 しかし、医学博士で防災・危機管理アドバイザーの古本尚樹氏はこう警鐘を鳴らす。

「人出が増えれば感染者数が増えるというのは、これまでの絶対的経験則。これだけ多くの人が全国各地に旅行したのだから、その反動は絶対来る。また、東京都の感染者数がここにきて一気に減ったように見えるのも、医療機関も連休に入って検査数が不足しているから。何かもう大丈夫なんだという緩みが出ているが、決してコロナが終わったわけではない」

 古本氏はGWの反動について「GW明けから梅雨入りにかけて」の期間の感染者数に表れると予測しているが、重症者病床を逼迫することになるかはGW期間中にどのような変異ウイルスが市中で感染拡大したかによるという。

 現在は“ステルスオミクロン”とも呼ばれるオミクロン株の亜種BA・2が主流だが、このほかにも4月に入って新亜種「XE」が発見され、さらにはGW直前になって宮城・仙台で国内初となる新亜種が確認されている。これらがどのくらい危険な亜種なのか、まだ詳しいことはわかっていない。

 そんな中、「脱マスク論」まで飛び出す国内の緩み切った状況に古本氏は「喝!!」だ。

「コロナが終わったわけでもないのに、GWのような緩みっぱなしの状況が続くのは良くない。反動が出始めたら、感染対策がしっかりしていないと一気に感染者数は増える。国がしっかり国民に徹底した感染対策をアナウンスすべき。海外に倣った早急な脱マスクなど論外です」(古本氏)

 とはいえ、どこかでウィズコロナの社会にかじを切らなければならないのも事実だ。その象徴となるのが「脱マスク」の社会を取り戻すことだろう。古本氏は国内の脱マスクの時期について「子供たちが学校に行かなくなる夏休みが一つのタイミングではないか」と見ている。夏休みならワクチン接種ができない子供たちを介した感染を防げるため、社会全体として脱マスクの実験もしやすいはずだ。

 果たしてGWの反動で感染者数はどれほど増えるのか。これが脱マスクへの試金石となりそうだ。