ロシアの外務省が4日に発表した「入国禁止リスト」の内容が物議を醸している。計63人の対象者には、岸田文雄首相に松野博一官房長官、林芳正外相ら岸田内閣の面々が並ぶ。自民党政調会長の高市早苗氏の名も見られ、本人が「上等やないかいっ。招かれても行かんわい!」とタンカを切っていた。

 さらに、元SPEEDの今井絵理子参院議員の名前も。これは参院沖縄・北方問題特別委員会の理事を務めているからと思われる。衆参の同委員会理事がリストアップされているのだ。

 メディア関係者からは読売新聞の渡辺恒雄氏に産経新聞社長ら。スポーツジャーナリストの二宮清純氏と週刊文春編集長の名前まであった。

 このリストの意図はどこにあるのか。軍事ジャーナリストの鍛冶俊樹氏は「多くの人はロシアに行きたがっていないので、あまり意味はないでしょう。日本はロシアに対して経済制裁をしており、ロシアからすると何かしら報復をしないと格好がつかないということ。リストを見ても深い考えがあるとは思えず、おそらくロシアの外務省で作ったもので、情報機関が作ったものではないでしょう」と指摘した。

 ロシアの情報機関とは、FSB(ロシア連邦保安庁)とSVR(ロシア対外情報庁)という旧KGB(ソ連国家保安委員会)の流れをくむ組織のことだ。「諜報能力を使わずに作ったリストで形だけのもの。むしろ安倍晋三元首相など日露関係で重要な人物は入っていないのでは?」(鍛冶氏)

 実際、安倍氏の記載はない。あまり重要視するようなリストではないとのことだが、それではロシアの情報機関の活動はどういうものなのか。このリストからはその一端はうかがえないというのだが…。

「ロシア大使館では日本で出版されているものはすべて目を通しているといいます。大使館職員に情報機関の人間が紛れているともいいます。もちろん外に出て人に会いにも行きます。安全保障に詳しい国会議員だったり、反ロシア的な発言をする文化人だったり。そういう人たちを取り込もうとするわけです」(同)

 そのような成果が反映された入国禁止リストではなさそう。「『リストに入ってない!』とがっかりする人もいるみたい。武勇伝にはなりますからね」と鍛冶氏。今後、追加があるかもしれない。