【取材の裏側 現場ノート】4月15、16日の2デイズで〝プロレス・格闘技の聖地〟後楽園ホールが60周年を記念して開催したプロレス興行「還暦祭」は大盛況で幕を閉じた。

「女子プロレス・ドリームフェスティバル」と題した初日大会は、女子プロレスラー総勢44選手が参加。昨年11月デビューの若手(アイスリボン・松下楓歩)から尾崎魔弓らベテラン勢が一堂に会した祭りで、主役の座を奪ったのが「スターダム」の〝闇の黒虎〟スターライト・キッドだ。

 昨年6月の「大江戸隊」入りを機に大ブレークを果たし、今や業界トップクラスの発信力を誇る。しかも、とにかくよくしゃべる。2つの質問だけで、インタビューが完結したこともあるほどだ。「黒い論客」といえば蝶野正洋だが「闇の論客」「大江戸隊の広報部長」といった異名を取るにふさわしい存在だ。

 そんなキッドのプロレスに対する考えが変わったのは、大江戸隊入りする少し前のこと。昨年2月13日に後楽園ホールで初挑戦したワンダー王座戦だ。当時の王者は〝お騒がせ女〟ジュリア。結果的にベルトには届かなかったものの、大きな収穫を得たという。

「これからは感情とか前面に出していこうと思ったのと、あの試合で自信がついた。こういう試合を求められているんだなって。今まで特に考えず、与えられたものをこなしてきた。でも、ジュリアは参考にしてもいいなとその時に思った」と明かす。

 決戦に向けた挑発、そしてマスクまではがされ、女同士のジェラシーむき出しで戦った試合――ジュリアから心の奥底に隠れていた感情を呼び起こされたのだ。しかもそれにより、今まで知らなかったプロレスの楽しさを知った。

 プロレスに対する取り組み方が変わったのも、そこからだった。「それまで大人の意見を聞かず、相談することもなかった。自分から何をしたいと行動することもなかった。だけど、そこから周りの意見を聞くようになったね。まず聞くようにして、ヒントをもらって自分で考えるようになった」

 目指すべき方向が正しいと確信したのが、大江戸隊入りしてからだ。「大江戸隊に入った時にみんなが自分に注目したじゃん。あっ、自分が動かしてるって楽しくなった。楽しいなと思うことは前より増えたけど、その分、自分がやらなきゃ、引っ張らなきゃみたいな悩みも増えた。とにかくプロレスを考える時間が増えたよ」

 5日の福岡大会でゴッデス王座を失ったキッドは今後、どこに向かうのか。動向を追い続けようと思う。

(プロレス担当・小坂健一郎)