ライバルが闘志に火をつけた。大相撲夏場所2日目(9日、東京・両国国技館)、横綱照ノ富士(30=伊勢ヶ浜)が幕内高安(32=田子ノ浦)を小手投げで下して休場明け初白星。取組後は「慎重に圧力をかけていこうと思った。よかったと思います」と納得の表情を浮かべた。

 横綱にとって高安は特別な相手でもった。通算成績は12勝12敗の五分。稽古場からしのぎを削り、互いにライバルとして認め合ってきた。ともに大関から陥落した経験もある。先場所は照ノ富士が途中休場する一方で、高安は12勝3敗の好成績を残して優勝決定戦に進出。しかし、賜杯まで一歩届かず、横綱は自分のことのように悔しがったという。

 照ノ富士は「(高安とは)若い時から2人でずっと稽古してきたので、優勝してほしかった。まだチャンスはいくらでもある。これからも高め合って頑張っていきたい」と、これからも2人で切磋琢磨していくことを誓った。

 初日は黒星発進となり不安を残したが、この日は粂川審判長(元小結琴稲妻)も「いい相撲だった。昨日負けていたのでどうなるかと思ったが、落ち着いて取れていた」と本来の力強さを感じ取った様子。早くも三役以上の全勝が消え「(優勝争いは)混戦になる」と予想した。

 照ノ富士は「できることをやってきたので、信じてやるだけ」。逆襲へ向けて、静かに闘志を燃やしていた。