「相撲やめろ!」の声をはね飛ばす勝利だ。大相撲夏場所4日目(11日、東京・両国国技館)、大関正代(30=時津風)が幕内高安(32=田子ノ浦)を押し出して初白星。最後は倒れ込むほど気迫が前面に出た内容に「立ち合いから圧力負けした感じはありますけど、最後まで崩れなかったのがよかったと思います」と安堵の表情を浮かべた。

 苦い記憶をなかなか払拭できなかった。先場所の4連敗に続き、今場所も初日から出口の見えないトンネルに突入していた。正代は「前半戦はどうしても悪いイメージが残っている」とポツリ。それでも過去4連勝中の元大関を下し、負の連鎖を断ち切った。

 地元にとっても待望の1勝だった。熊本・宇土市では正代が白星を挙げるたびに花火を打ち上げるのが恒例行事。ところが、今場所も連日の黒星に〝勝利の儀式〟を行う機会が訪れず、地元関係者からは「なんとか頑張ってほしいが…」とため息が漏れていた。

 また、後援会関係者によると、大関が期待に応えられていないと感じた人たちから、後援会に「正代、相撲やめろ」といった厳しい意見も寄せられたという。しかし、後援会長の金田光生氏は「嫌なことを言われても『まあ、いいから見とれ』と。我々は彼を信じるだけですよ」と揺るがない。約300人の後援者には「こういう時こそ応援してくださいと。勝ってる時は誰でも応援できるんだから、負けてる時こそ一生懸命応援してくださいとお願いしています」と明かした。

 やっとこの日、3発の〝祝砲〟が夜空を彩り、金田氏にも笑顔が広がった。「まずは勝ってくれてよかった。ここから頑張ってほしいです」

 復調のきっかけをつかんだ正代は「この調子で連勝できれば」と逆襲を狙う。故郷から届く熱いエールを力に変えるしかない。