国立天文台など日本を含む国際チームが12日、地球が属する天の川銀河の中心にある巨大ブラックホール「いて座Aスター」の輪郭を撮影したと発表した。ブラックホールであることを間接的に証明する成果が2020年のノーベル物理学賞に選ばれており、今回は画像として直接的に捉えることに初めて成功し、その存在を裏付けた。

 チームは19年、世界で初めて別のブラックホールの輪郭を撮影したと発表しており、それに続く2例目の大きな成果。ブラックホールは宇宙に多数あるとされるが不明な点が多く、複数を比べることで特性の解明に役立つと期待される。銀河の形成との関わりを探る手掛かりにもなりそうだ。

 そもそもブラックホールとは何なのか。科学問題研究家の阿久津淳氏はこう語る。

「20年にブラックホールの研究でノーベル賞を受賞したロジャー・ペンローズ教授がかつてブラックホールを説明したことがあります。らせん状の大きなじょうごを作り、ゴルフボールかピンポン球がぐるぐる回り、力尽きて、中央の穴ぼこに入る様子を紹介したのです。穴ぼこがブラックホールで、その入り口である『事象の地平線』の内側はどんな物質も抜け出せないというわけです」

 その説に反対したのがあの故スティーブン・ホーキング博士だった。物質は落ち込むが、反粒子が事象の地平線から飛び出てくるというのだ。

 阿久津氏は「つまりブラックホールは宇宙物理学の核心部分、いわば急所。アインシュタインの相対性理論(マクロ)と量子論(ミクロ)の交差点。日本チームは世界で初めてブラックホールの姿を、世界の電波望遠鏡と連携して、あらわにしました。だが、国内の基礎科学への評価は低く、予算は削られたのです。今回のさらなる快挙でもっともっと宇宙科学、特に基礎科学への予算を考慮すべきではないかと考える次第です」と指摘している。