南仏で17日から28日まで開催されるカンヌ国際映画祭で、ウクライナでロシア軍に殺害されたリトアニア人映画監督マンタス・クベダラビチュスさんの遺作が特別上映されることが明らかになった。

クベダラビチュスさんは、4月上旬にロシアの侵攻を受けたウクライナ南東部マリウポリを舞台にしたドキュメンタリーを撮影中にロシア軍に拘束され、殺害された。ウクライナ国防省は4月2日に45歳のクベダラビチュスさんが亡くなったことを発表しており、リトアニアのメディアは病院に緊急搬送されたものの助からなかったと報じていた。

クベダラビチュスさんは、ロシアがウクライナ領土だった南部クリミアを併合し、東部に自称共和国を作った2014年の紛争に巻き込まれたウクライナの人々の日常を記録したドキュメンタリー映画「マリウポリス」を16年に発表しており、その続編の撮影のため緊張が高まる東部ドンバス地方に戻っていたという。「マリウポリ2」と題された続編は、19日と20日に上映される。

米バラエティ誌によると、クベダラビチュスさんは前作の撮影で知り合った現地の人々をもう1度撮影するため、今年に入ってウクライナ入りしていたという。クベダラビチュスさんが撮影した映像は当時一緒に行動していた婚約者が国外に持ち出すことができ、編集者と共に編集して作品を完成させたという。

同映画祭の主催団体は今年3月1日に声明でウクライナ支援を表明し、今年のカンヌ国際映画祭ではロシアの公式代表団並びにロシア政府の関係者の出席を拒否することを発表している。(ロサンゼルス=千歳香奈子)