サプリメントは正しい使い方をしなければ効果が期待できないという。必要な栄養素を補い元気に老後を過ごす方法を「60代からの最高の体調」(アスコム)の著者でマイシティクリニック院長・平澤精一医師に教えてもらおう。
――“老後の楽しみ”とはよく言いますが、高齢になるとまずは何より体調の変化が気になります
平澤医師(以下平澤)60代以降のシニアの健康意識を調査したデータによると、シニア世代が今一番楽しみにしているものは旅行や運動、スポーツ、買い物、孫との外食などすべて基本的にはアウトドア的なものが多く、健康で体力が必要なものばかりでした。そうした中で、実は今一番、資産を持っているのがシニア世代だとも言われています。
――しっかりと貯蓄している人が多いんですね
平澤 一般的には若年層に比べるとシニア世代の方が資産を持っているということです。ところがシニアの世代は自分が病気になったらどうしようとか、配偶者が病気あるいは介護が必要になったらどうしようといった懸念から、お金を楽しみのために使わずにため込むという人が多いのです。やはり、そういった心配をなくすために健康な状態をつくることが大切ですよね。
――サプリをうまく活用するのもひとつの方法だとも言われます
平澤 そうですね。60代以降になってくるとどうしても少食になったり消化能力が低下したりと体調を維持するのが難しい状態になってきます。その分を食事で補えればいいのですが、少食になっていたり吸収力が低下していたりなどの問題があります。
――簡単ではない、と
平澤 また、最近は、加工食品やインスタント食品、ジャンクフードが氾濫しており、食材自体が貧弱になってきています。それに加え、食材を収穫してから口に入れるまで時間が経過しても大丈夫なように保存技術が発達しました。実は、食材の栄養素は時間がたつほど十分に維持できなくなります。結局、食べるころには栄養素が相当低下しているんですね。
――そうなんですか!
平澤 ホウレンソウなどに含まれる鉄分は50年前に比べると栄養素が8分の1から20分の1程度にまで含有量が低下しているという事実もあるんです。十分に取れない栄養素をサプリメントで取ることは予防医学的にも効率的で非常に重要であると言えます。
――どんなサプリを取れば良いのでしょうか
平澤 まずは、マルチミネラルやマルチビタミンと呼ばれるものは、人間の体に必要な栄養素です。これがちゃんと体内にないとそれ以外のものをいきなりサプリメントで取ってもうまく利用できません。自分に必要な栄養素を知るためには血液検査の結果を見てください。必要な栄養素を補給した上で、認知症を防ぐDHAなどの血流を良くするようなサプリや酸化を防ぐ抗酸化物質などを加えたりするのが良いでしょう。基本的にはマルチビタミンとマルチミネラルをしっかり取ることが基本中の基本で大事なことです。
――なぜその2つが重要なのでしょうか
平澤 カロリー源となる糖質や脂質、タンパク質が体内で代謝される際、ビタミンやミネラルが補酵素として働いています。摂取したカロリーに見合う量のビタミンやミネラルが体内になければうまく代謝できず、カロリーが脂肪として身に蓄えられてしまうのです。その結果、肥満になったり生活習慣病のもとになります。その他の栄養素に関しては健康診断のデータを参考に、自分に足りない栄養素を把握し、それを集中的に取るのが良いでしょう。
☆ひらさわ・せいいち 日本医科大学卒業。1992年に「マイシティクリニック」を開業。健康寿命に深くかかわる「テストステロン」の研究者として熟年期障害の治療や高齢者の健康を守る取り組みを数多く実践。