阪神は15日のDeNA戦(横浜)に8―1で快勝。1試合2本塁打をマークした佐藤輝を筆頭に打線が11安打と奮起し、カード勝ち越しを決めた。本紙評論家の伊勢孝夫氏は、野手陣がドン底の貧打状態から抜け出しつつある今だからこそ、5月月間打率1割2分2厘と不振にあえぐ大山悠輔内野手(27)に対し「一時的にスタメンから離脱させてでもミニキャンプを張らせ、打撃フォームの根本的な修正に取り組むべき」と指摘。好投手との対峙が連続するであろう交流戦へ向け、背番号3の復調を最優先させるべきだと持論を展開した。

【新IDアナライザー 伊勢孝夫】インハイへのツーシームを読み切った上で右翼席へ運んだ第2打席の8号ソロ。初球の甘い球を一撃で仕留めた第3打席のバックスクリーン右への9号ソロと、この日の佐藤輝の打撃内容は実に見事だった。ルーキーイヤーの昨季に何度も直面した自身の課題を着実に克服できている。彼の確実な進化を感じ取ることができた一戦だった。もう一人の打線の軸である不動の1番打者・近本も4打数2安打2打点と好調を持続。相手バッテリーのマークが分散されたことも、佐藤輝にとっては好材料だっただろう。

 問題は佐藤輝の後を打つ5番・大山だ。この日は2安打と結果こそついてきたが、まだまだ状態が上向いてきたとは私には思えない。ポイントへ向け一直線にバットが入らないため、インサイドや速い球への対応が相変わらずできぬまま。これまで何度も目にしてきた「悪い時の大山」の典型的な症例だ。この点をきちんと修正しない限り、根本的な解決にはつながらないだろう。

 幸い今は近本、中野の1、2番コンビだけでなく、コンディション不良を乗り越えスタメンに復帰した糸井も好調。このタイミングなら大山を一時的にスタメンから外してもチームは何とかなる。一軍に同行しながら〝ミニキャンプ〟を張り、打撃コーチとマンツーマンで午前中から室内練習場などで徹底的なフォーム修正に取り組むのも一つの手だろう。

 5番打者に打力や怖さがないと、4番・佐藤輝は「最悪、歩かせてもOK」といった構えで相手バッテリーから厳しい攻めを受け続けることになる。そして「虎の5番」の重責を担える器を備えた打者は、やはり大山しかいないのだ。結局のところ彼の復調なしに阪神の上位浮上はありえない。大山がこのまま打てぬままなら、遅かれ早かれ佐藤輝も死んでしまうだろう。

 交流戦開幕まで残り1週間。阪神は、田中将(楽天)、佐々木朗(ロッテ)、山本(オリックス)などの好投手との対峙が不可避な状況だ。それまでに大山を復調させることがチームにとっても重要なミッションになる。

(本紙評論家)