サッカーのJリーグが30年目となる節目のシーズンを迎え、元日本代表FW武田修宏氏(55=本紙評論家)がリーグの未来に向けて緊急提言を行った。1993年にV川崎(現東京V)―横浜Mによる開幕戦が行われた「Jリーグの日」にあたる15日に当時を振り返りつつ、サッカー界の危機的状況を指摘。盟友のFW三浦知良(55=鈴鹿)に〝救世主〟として期待を寄せた。

 Jリーグが大きな節目を迎えた。創設当時の熱狂的なフィーバーの中心にいた武田氏は「まずはJリーグ30周年おめでとうございます。5月15日の開幕戦のピッチにいたこと、あのグラウンドに向かう階段のことを思い出すと涙が出てくる」と祝福の言葉を寄せた。

 ただ、その後のJリーグの成熟を評価しつつもサッカー界の現状には危機感をあらわにする。「プロじゃない時代からヴェルディの全盛期という歴史をつくってきた立場からすると、現在のJリーグは寂しく、危機感を感じている。日本のサッカーは大丈夫か?と思ってしまうし、本当に心配だ」と率直な思いを吐露した。

 その理由をこう説明する。「クラブの数は当時の10から50以上に増えた。それは多すぎるのではないか。例えば料理店も、店舗を増やすと質が落ちて、やがてお客が来なくなり潰れてしまう。現在はいろんなクラブがあるが、チームのカラーが薄くなり、個性もなくなってきている」。さらに、スポーツ界全体を取り巻く状況も開幕当時とは変わっており「サッカーと野球だけの時代から、バスケットボールやラグビーなどファンの関心も多様化している。また少子化もあり、スポーツの置かれた状況は厳しい」とズバリ指摘した。

 そうした窮地を打破するために「プロは勝ち負けが大事。経営も大事だが、グラウンドでの質を重視し、スタジアムに来てくれたファンが『お金を出してよかった』と思える試合をすることが大事だ」とサッカーの本質に立ち返ることを力説した。

 サッカーを向上させるため、メディアに対しても〝注文〟を付ける。「今はネガティブな報道が排除されてしまい、厳しい批判があまり見られない。安易に選手を持ち上げることが果たしていいことなのか。MF久保建英(マジョルカ)やMF松木玖生(FC東京)など若手で期待の選手も出てきているが、実力以上にもてはやされてはいないか。いいものはいい、ダメなものはダメとしっかり言わなければいけない。選手は普通の仕事よりも高い報酬をもらっているのだから、厳しい目にさらされて当然だ」。メディアが選手を〝甘やかす〟ことは選手の成長を妨げるというわけだ。

 Jリーグの運営にも直言する。「野々村(芳和)チェアマンは素晴らしい仕事をしている」と3月に就任した旧知の新リーダーに期待を寄せつつ、将来的には「カズさんにチェアマンをやってもらいたい。日本サッカーのトップに立ち、プロサッカーとは何か、考え方や組織を変えてほしい。そして中田英寿氏やMF長谷部誠(Eフランクフルト)、MF本田圭佑なども〝仲間〟に加えて改革をしてもらえれば」とレジェンドたちによる〝オールスター体制〟でJリーグを進歩させていくことを進言した。

 Jリーグの草創期を支えた元スター選手の言葉には、日本サッカー界発展のヒントが隠されている。