〝癒やし系力士〟が大仕事をやってのけた。大相撲夏場所8日目(15日、東京・両国国技館)、幕内隆の勝(27=常盤山)が横綱照ノ富士(30=伊勢ヶ浜)を寄り切って撃破。自身初の金星で、6勝目(2敗)を挙げた。取組後は「本当にうれしい。胸を借りるつもりで全力で前に攻めた。いい相撲で勝てたので、自信になる」と興奮気味に振り返った。

 部屋では大関貴景勝(25)の陰に隠れがちながら、すでに三役6場所(関脇5、小結1)を経験している実力者。敢闘賞も2度獲得している。今年の目標に「大関」を掲げていたが、2場所連続の負け越しで平幕へ転落した。一方、先場所は同学年の関脇若隆景(27=荒汐)が初優勝して大関候補に名乗り。隆の勝は「(自分より)番付で上にいるので負けられない」と対抗心を燃やしている。

 千葉・柏市出身で6人きょうだいの4番目。小学生までは1歳違いの3番目の姉とのケンカで常に〝黒星〟を喫していたという。隆の勝は「年子のお姉ちゃんには負けたくない。ずっとケンカして、負けてましたね」と当時を振り返る。その少年が、今では幕内上位に定着。ファンの間で「おにぎり君」の愛称で親しまれる〝癒やし系力士〟としても注目の存在だ。

 この日で1敗力士がいなくなり、優勝争いのトップに浮上した。それでも本人は「(V争いは)あまり意識はない。一日一番」と目の前の取組に集中する構え。このまま白星を重ねていけば、2敗に5人、3敗に11人がひしめく大混戦の主役に躍り出る可能性も十分だ。