“第2のディーン・フジオカ”と呼ばれる俳優がいる。中国映画界で活動してきた木幡竜(45)だ。自身にとって日本で初主演となる映画「生きててよかった」が13日、公開された。元ボクサーで“逆輸入俳優”と異色の経歴を持つ木幡の素顔に迫った。

 木幡はアマチュアボクシングで結果を残し、プロに転向。“モンスター”井上尚弥らを擁する大橋ジムに所属した。サラリーマンを経て、2004年の映画「ゴジラ FINAL WARS」で俳優デビューしたが、なかなか芽は出なかった。

 オーディションに合格して出演した09年の中国映画「南京!南京!」で評価され、単身で中国に拠点を移す。それ以降は何本も中国映画に起用された。

 日本で一躍注目を集めたきっかけは、俳優の綾野剛主演で昨年10月期に放送されたフジテレビ系「アバランチ」だ。木幡は同作で“最凶の敵”を熱演した。

 日本で初主演の映画「生きててよかった」は20年12月、都内などで撮影された。ドクターストップにより強制的に引退を迫られたプロボクサーの物語。自身の現役時の経歴も生きた。撮影のために「食事制限しました。2か月間くらい、1日豆腐1丁と納豆くらいしか食べなくて」と言う。

 現役時と近いトレーニングも敢行。体重は62キロ↓52キロまで絞り、鋼のような肉体に仕上げた。

「体脂肪率は3%。へたすると、アクションシーンで手がしびれます。これは脱水症状。まあ、慣れてますがね。腹の中に何もないけど、腹が減る感覚もない。胃がちっちゃくなってるので」

 撮影のために現役時と同じような苦しい減量生活を送り、「映画はもちろん仕事だけど、40歳越えて、また何やってんだろなっていう思いはありました(苦笑)」。

 元ボクサーだけに、特有のコワモテなオーラがにじみ出る。

「いや、ボクサーは弱いと思います。ボクシングをやってる人は、皆弱いから強くなりたくてやってると思う。強くなればなるほど、暴力で強いことが人間的な強さじゃないと分かると思います」

 弱点はあるのか。

「学(がく)がないことかな(苦笑)。横浜高→中央大はスポーツ推薦で。頭良く見られたいですが」

 とはいえ、中国での長い生活で中国語はペラペラだ。

「『日本語しゃべれるんですね』とか言われます。中国で活動していることと、『竜』という名前で中国人と思われることがあって。日本人です」

 俳優のディーン・フジオカが台湾で活動後、“逆輸入”の形で日本でブレークしたことから、“第2のディーン”ともいわれる。

「全然違う。まず顔が違いますから」

 今後も日中を股にかけて活動する。親交があった、世界的な衣装デザイナーのワダエミさん(昨年死去、享年84)に、「日中どっちに軸足を置けばいいか」と尋ねると、「軸足はいらない」とアドバイスされた。

 デビューから苦節18年で封切られる主演作を経て、日本映画界にも本格的に殴り込みをかける。

 ☆こはた・りゅう 1976年9月12日生まれ、神奈川・横浜市出身。175センチ、58キロ。横浜高、中央大のボクシング部を経て大橋ジムに所属した。現在は日本在住。