【取材の裏側 現場ノート】日本テレビの河村亮アナウンサーが脳出血で亡くなった。ニュース速報を目にした瞬間、思わず「ウソだろう…」と絶句した。54歳は若すぎる。

 河村さんの実況はスマートだった。絶叫し過ぎることもなく、事前取材した情報を必要以上にひけらかすこともなく、冷静な口調で聞きやすかった。

 記者が巨人担当を務めた1996年から2004年にかけて現場で何度も顔を合わせたが、強く印象に残っているのは原監督が就任1年目で日本一になった02年だ。残念ながら正確な記録はないが、あの年、河村さんが実況した試合は負けなかったと思う。

 球場で顔を合わせるたびに「今日は実況?」「そうですよ」「必勝アナウンサーの出番なら今日も勝ちだ」「プレッシャーかけないでくださいよ」と笑ったものだ。実際、逆転勝ちを重ねて“必勝神話”は継続した。

 そんな中、「さすがに負けたと思いましたよ」と河村さんも驚いたのが6月13日のヤクルト戦だった。7回を終わって0―4とリードを許し、坂元弥太郎投手がノーヒットノーランを継続中。抜群の内容で記者席は大記録間違いなしの空気が流れていた。しかし、8回一死に元木が本塁打で夢を砕くと、阿部が連弾。9回二死二塁で守護神・高津から清原が起死回生の代打同点弾を放って延長へ。最後は延長11回に福井がサヨナラ3ラン。あまりに劇的な勝利だった。原監督初の日本一に河村さんの貢献度は大だったと当時も、今でも信じている。
 
 巨人が苦戦している今こそ出番だった…。名実況を聞くことができないのは寂しい限り。どうかゆっくりお休みください。(元巨人担当・本間壮児)