今季から米女子ツアーに本格参戦している渋野日向子(23=サントリー)は、メジャー初戦「シェブロン選手権」4位など3回のトップ10入りを果たした。早くも来季シード権を確実にするなど、しっかり結果を残して今週は「ブリヂストンレディス」(19日開幕、千葉・袖ヶ浦CC袖ヶ浦C)で今季国内初参戦。そんな渋野の強みを米ツアー参戦経験もあるプロゴルファー・東尾理子(46)に聞いた。


 渋野はメジャー4位のほか、先月のロッテ選手権(ハワイ州)では2位。米ツアーの戦いにすぐさま適応するたくましさを見せている。東尾は「どんどんよくなっています。(昨年に)スイングを大きく変え始めた時に比べてヘッドスピードは断然上がっていますし、振り切る感が全然違います」と目を見張る。

 プロの視点では、昨年からスイング改造に着手し、ここまでの完成度に仕上げてきたのは驚異だという。「スイング改造は本人も言っていましたが、左のミスをなくしたかったということ。実際にそのミスが減り、1Wの飛距離も伸びています。ただ、私たちにとってスイングを変えるのは、少しだけでもすごく大変。それこそ(右利きなら)左で打つようにするくらいですが、それを1年くらいでものにしています。これは考えられないようなことなんです」

 ショットの安定だけでなく、アプローチの進化にも注目する。「すごくよくなっています。チップインが多いですし、そうでなくてもグリーン周りから入りそうな感じがすごく増えています。アジャスト能力が非常に高いのと、必要性を感じてバリエーションを増やしてきた努力の結果だと思います」。その上で「ここの伸びしろは、さらにあると思います。ボールを柔らかく真上に上げられるロブショットもできるようになれば、もっとグリーン周りの選択肢が増えますよね」と指摘した。

 また、メンタル面も強力な武器だという。象徴は優勝した2019年「AIG全英女子オープン」最終日、首位と2打差で迎えた12番パー4のティーショットで1Wを握ったシーン。1オンが可能な一方でグリーン右の池に入れるリスクが伴う中、それを成功させてのバーディーで優勝を引き寄せた。「全英の12番は、1%でも不安があると打てないショットなんですよ。心の底から自分を100%信じないとスーパーショットは打てません。技術はあっても、そこまで心が強く攻め切れるプロは少ないですから」

 では、なぜそういった心境になれるのか。東尾は「渋野さんがメンタルトレーニングをしているというのは聞いたことはないので、ナチュラルに持っているのでしょう。ある意味、そういう状況も楽しんでいると思います。でないと、なかなかできるものではありません」と分析。昨年6月の「全米女子プロ選手権」2日目は、12番パー5で3打目の池ポチャからパーをセーブし、最終18番パー5で2オンイーグルを決めて神がかり的な予選突破を果たしたのも、このメンタルがあるからだろう。

 今回の国内初参戦後は「全米女子オープン」(6月2日開幕、ノースカロライナ州)など、再び海外での戦いに臨む。期待される日本人初の海外メジャー2勝目については「飛距離もアイアンの正確性もありますし、100ヤード以内も寄せる力があります。メジャーの週にパットがハマればいくらでもチャンスがあります」。今後の快挙も十分に期待してよさそうだ。