NHKのギャラは民放より安いと言われている。それでも全国すみずみまで放送されるどころか、海外でも視聴されるため、知名度が抜群に上がり、メリットが大きいためだ。しかし、NHKがそのギャラを来年度から大幅に見直す動きが出ており、テレビ界に激震が走っている。

 NHKでは先日、月刊「文藝春秋」に「職員有志一同」が「紅白打ち切りの方向で進んでいる」などと告発し現体制を批判。さらに国外でも逆風は吹いており、イギリス政府が公共放送BBCの受信料一律徴収の廃止を提案。フランスも公共放送の受信料を廃止する方針だ。当然国内でもNHKのあり方についての議論が加速している。

 そんな中、NHKは「安い」と評判だった出演者に対するギャラをアップする方向に舵を切ったという。民放編成関係者は「民放キー局は右往左往しています。NHKに対する唯一のストロングポイントが奪われる可能性が出てきたんです。ギャラの見直しが行われると、NHKが最優先のキャスティング権を持ち、民放は常に二番手の扱いになるということです」と語る。

 4月末に極秘裏に催された経営委員会の分科会ではギャラに関する議題が出たという。制作局の幹部らが招集され、テーマは地上波番組に関連するネット同時配信など、今後のNHKのあり方を左右する重要な議題ばかり。

「なかでも出席者の関心を集めたのが制作費で、特に出演料に関するものでした。なぜ紅白の辞退者が増えているのか? なぜバラエティー番組、大河ドラマや朝ドラ以外のドラマは視聴率が振るわないのか? その延長線で出てきたのがギャラ問題だった。民放と対等に戦っていくためには、出演料を見直して、魅力あるキャスティングをするしかないわけです。そこで出演料の底上げ案が出たんです」(NHK関係者)

 経営委員会の席上、出演者のギャラが話題になったのが「鎌倉殿の13人」。意外にもギャラが一番高いのは主演の小栗旬ではないのだ。

「トップは後白河法皇役の西田敏行。続いて平清盛役の松平健、鈴木京香、佐藤浩市ときて、主演の小栗は西田の半分ほど。驚くほど安いんです」(制作関係者)

 脇役のギャラが主演を超える。何とも奇怪な話がNHKではまかり通ってきたわけだ。その理由について、ある放送作家はこう明かす。

「NHKは伝統的に貢献度主義を採用してきた。今が旬だからギャラが高いという考えではなく、これまで何本のNHK作品に出演し貢献してきたかが大事。だから若い俳優はギャラが安くなってしまう。当然、旬の俳優はなかなかNHKの番組に出たがらない」

 民放を戦慄させるNHKのギャラ改革。果たしてどの程度、アップするのか注目だ。