【全仏オープンに挑むスター現状(2)】赤土最強男の原点とは――。テニスの4大大会、全仏オープン(パリ)が22日に開幕。今大会はクレー(赤土)コート最高峰の戦い。男女V候補3選手にスポットを当てた連載2回目は男子世界ランキング5位の〝クレーの鬼〟ラファエル・ナダル(35=スペイン)だ。彼の強さはいったいどこにあるのか。GAORAテニス中継の解説者・佐藤武文氏が徹底分析する。

 もはやクレーコートで彼の右に出る者はいない。全仏オープンは優勝13回、通算105勝3敗というとんでもない成績。さらに今年1月の全豪オープン(メルボルン)では2度目の優勝とともに歴代単独トップとなる4大大会21Vを達成。クレーでもハードでも他を圧倒し、芝のウィンブルドン選手権(英国)も過去2度制覇。ダブル生涯グランドスラムという金字塔を打ち立てている。

 試合開始の直前まで素振りし、ラケットをケースにしまわず〝ジカ持ち〟してコートに登場するスタイルは有名。この愚直な姿勢がナダルの真骨頂だ。原点は幼少期にさかのぼる。地元でも有名なほど運動オンチだったナダルは、元テニス選手の叔父トニ氏から想像を絶する過酷な指導を受けた。

「理不尽なほど手の届かない球を出され、しごかれたようです。運動神経が悪いナダルは『アリとキリギリス』のアリのように地道に努力し、少しずつ実力を上げて今につながっているのです」(佐藤氏)

 その猛練習の場所はもちろんクレーコート。無類の強さの理由がよくわかる。

 だが、ここ数年はケガに悩まされ、満身創痍の状況。ナダル自身も「足の状態は厳しい」と明かしており、今大会は主治医を帯同して練習を行うという。佐藤氏は「彼のキャリアを考えても今回は正念場。まさに切羽詰まった状態です」と現状を分析しつつ「もし手負いのナダルが大会を制したら、今までにない特別な優勝になるでしょう」と語る。

 毎年、大会中に誕生日を迎えるナダル。今年は準決勝に36歳になるが、この運命の巡り合わせも「全仏に愛される男」と言われるゆえんだろう。