宇都宮競輪GⅢ「開設73周年記念」(宇都宮ワンダーランドカップ争奪戦)は22日、12Rで決勝が行われ、吉田拓矢(27=取手)が真杉匠(23=栃木)―金子幸央(29=栃木)の3番手から突き抜けて優勝。1月の立川以来、4回目のGⅢ制覇を達成した。

 有言実行のVだった。万全の状態で挑んだ前回のいわき平GⅠオールスターでは準決で敗退。最終日の敗者戦で1着を取った際に「悔しさを次の宇都宮記念にぶつけたい。優勝します」と明言していたのだ。普段、気持ちを抑えクールなたたずまいの吉田らしからぬ、闘志を押し出した強気なコメントだった。それだけ当大会にかける思いは強かった。

 だが、決勝は初のライン3番手回りとあって、慣れぬ持ち場に迷いもあった。「3番手の役割を分かっていなかったから、追走して内をしゃくられないようにと。自分の感性で走りました」と地元の栃木コンビを盛り立てつつ、勝負どころを探った。

 ゴール線を突き抜けると右手をグッと握りしめ「ヨッシャー」と叫び、心の奥底に秘めた思いをすべて吐き出した。もちろん勝ったこともうれしかったが、何より絆の深いラインが機能したことを心底喜んだ。

「栃茨(ライン)って昔からあって、僕にとってはすごく大事。よりラインの大切さが分かったし、3番手を回ったのは間違いじゃなかったと思いました。4日間、助けられました」

 表彰式はいつも通りに、クールな面持ちだったが賞金ボードを掲げた際にスタンドのファンから「タクヤ~。ガソリン代くれよぉ~」と声援が飛ぶと、このときばかりは頬を緩めた。

 この先は佐世保の全プロ記念競輪(5月28~29日)を挟み、待望の地元・取手記念(6月4~7日)が控える。「(取手記念は)一番勝ちたいところ。その次に高松宮記念杯(岸和田)もあるし。自分にとってGⅠを取ってグランプリに乗るって目標は揺るぎないので。そのためにも、まずは練習時間が欲しい。4月の武雄記念からずっと忙しいので」と、この先続く大一番を待ち焦がれていた。