モンスターに死角あり――。WBAスーパー&IBF世界バンタム級統一王者の井上尚弥(29=大橋)とWBC同級王者ノニト・ドネア(39=フィリピン)の3団体統一戦(6月7日、さいたまスーパーアリーナ)が2週間後に迫った。戦前の予想で井上が優位に立つ中、本紙は元世界6階級制覇王者マニー・パッキャオ氏(43=フィリピン)を直撃。勝敗の行方を占うとともに、レジェンドにしか見抜けない井上の〝穴〟を指摘した。

 すでに多くの現役ボクサーや専門家は勝敗予想で井上に軍配を上げている。英大手ブックメーカー「ウィリアムヒル」のオッズは井上1・16倍、ドネア4・75倍と圧倒的だ。井上自身も「今回はドラマにはならない。一方的に触れさせずに終わると思います」と自信満々だが、果たしてモンスターには一分のスキもないのか。

 本紙はドネアの母国の英雄で昨年引退したパッキャオ氏を直撃。日本ボクシング界の〝最高傑作〟をレジェンドの視点から分析してもらった。まず、ドネアとの一戦について「やはり日本で試合をやるので、井上が勝つ可能性がより高い」と回答した上で「どっちにしてもいい試合になると思う。ドネアもいいボクサーだ。お互いに精神的、物理的な準備をどれだけできるかだと思う」と見解を示した。

 しかし、フライ級からスーパーウエルター級まで6階級を制したレジェンドの眼力はダテではない。「対戦相手から見た井上の弱点は何か?」と質問すると、身ぶり手ぶりを交えながら次のように語った。

「彼は試合中に気を抜いているような瞬間がある。ケアレス(不注意)な状態だ。あまり注意を払わず、相手にフォーカス(集中)しないで戦う傾向があるように感じる。そこがどうも私は気になってしまう」

 パッキャオ氏と言えば、ファン・マヌエル・マルケス(メキシコ)、ミゲール・コット(プエルトリコ)、オスカー・デラホーヤ、フロイド・メイウェザー(ともに米国)ら名だたる相手と名勝負を繰り広げてきた。その達人の目には、モンスターの手の内もお見通しということか。

 そこで、パッキャオ氏に「もしバンタム級のあなたと、今の井上と戦ったら?」と尋ねてみると、少し沈黙した後に「お互いにアクション(動き)が多い試合になると思うよ」と言ってニヤリ。さらに「勝敗は?」と問うと、間髪を入れずに「もちろん、ウィン(勝つ)」と答えた。その不敵な笑みは「当たり前だろ」と言わんばかりだった。

 レジェンドが指摘したモンスターの〝死角〟。果たして、勝敗を分けるカギとなるのか――。