再起の原動力は超満員の甲子園――。最下位からの巻き返し期す阪神で最年長・糸井嘉男外野手(40)が鮮やかに〝復活〟を遂げている。

 ここまで34試合に出場、打率2割7分8厘、チーム3位の20打点。先発は30試合と昨季の15から倍増、最近は守備も起用法が変化した。4月まで左翼中心も、腰痛から復帰後の5月11日以降は8試合全て右翼で先発。20年目の今季「自分にあらがいたい」と〝限界説〟に反旗をひるがえし、昨季の主戦場だった「代打」からスタメンの座を奪回したことだけなく、パ時代にはゴールデングラブ賞を獲得したかつての定位置を再奪取する勢いだ。

 この復活劇に本人は「40歳でスタメンで出れているのには、周囲の方への感謝しかない。本当、それ」と、トレーナーなど普段からコンディションをサポートしてくれるスタッフのおかげと感謝。一方で「僕の場合は、特にそれも大きい」とシーズンに入り、奮い立つような出来事が起きた。開幕以降、コロナ禍による入場制限が撤廃されたことだ。

 阪神は主催試合の平均動員数3万6765人で12球団トップ。糸井は「この環境で試合に出れている。それがとにかくうれしい。これまで、なかなか球場に人も入れなかった。阪神に来て初めてこの大観衆でやったときに鳥肌が立ったことを思い出した。球場が満員になったのを見て、やっぱり、すごいところで野球をやっているんだなと。改めて思った」。連日、大盛況の甲子園のスタンドが奮起の源だ。

 今季は甲子園で打率3割5分、平均動員数2位の巨人の本拠地・東京ドームでは3割8分9厘と大観衆の試合ほど、打ちまくっている。「自分でも集中力が高くなっているとは思います」と、規定未満ながら得点圏打率も3割9分4厘。そもそもが〝お祭り男体質〟で、場が盛り上がるほど自然とテンションも上がるのが糸井の性なのだろう。

 シーズンの3分の1を終え「まだまだこれから」と鼻息の荒い糸井。交流戦では指名打者での出場も選択肢に入るが「ひと振り稼業」に老け込むつもりはなし。客席を埋め尽くした虎党の景色をエネルギーに変え、グラウンドを所狭しと駆け回るつもりだ。