歌舞伎俳優市川染五郎(17)の進化には目を見張るものがある。先日「六月大歌舞伎」(同2~27日、東京・歌舞伎座)で主演する「信康」の取材会を行った。

15歳の時にインタビューをしたのだが、2年でこんなにも変わるものかと思った。15歳当時からすでに色っぽさをのぞかせていたが、17歳の今では妖艶と言っていい雰囲気になった。コスメブランド、シュウウエムラのアンバサダーを務めているというのも大きく納得。

雰囲気だけではなく、受け答えも、自分の言葉でしっかりと話していた。「信康」で演じる徳川信康は家康の長男だが、織田信長に謀反を疑われ若くして死んだ人物。これまでも映画になったり、歌舞伎に登場したりしているが、今回ならではの信康を作るという。染五郎は「冷静で理知的。落ち着いているけど明るくて、若々しいところを見せて、悲劇とのギャップを見せたい」とした。取材会の前には、愛知、静岡へ行き信康ゆかりの地をめぐった。首塚も訪れたそうで、染五郎は「生々しく命を感じ、本当にここに生きていたんだ、本当の出来事なんだと感じました」と真摯(しんし)に語っていた。

NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で話題になり、昨年はアニメ映画「サイダーのように言葉が湧き上がる」で主演も務めた。旬の俳優だが、いたって謙虚に「自分は年齢的にも技術的にもまだまだ。アピールできることはまだありません」と言った。外から見ればアピールポイントはたくさんあるが、まだまだという気持ちが一生懸命さにつながっている。

取材会は質問が尽きず、約1時間弱の予定時間いっぱいだった。そういえば、1人で合同取材会に出るのは初めてだと聞いた。以前は言葉を探して沈黙になることもあったが、今回はそんなこともなかった。感じたこと考えたことを伝えることもうまくなったと感じた。【小林千穂】