西武・栗山巧外野手(38)が29日のDeNA戦(ベルーナ)、2―2の9回に今季1号となる代打サヨナラ本塁打を放ち、チームの5割復帰に貢献した。

 プロ21年目で3度目のサヨナラ弾に栗山は「ホント信じられない気持ち。うれしかったのと、気持ちよかったです。(意識したのは)塁に出ること、何より自分のスイングをしっかりすること。追い込まれていたので、あとはとにかくバットに当てるだけ。芯に当たったのも(打球に)角度がついたのもファンの皆さまの後押しがあったおかげ」とファンの存在に感謝した。

 キャリアの晩年で結んだ3年契約の2年目は、開幕から打率1割台と寄る年波を感じさせる低空飛行が続き、ベンチを温める日々も増えている。

 しかし「お待たせしました!」とお立ち台でちょっと照れ臭そうにファンにあいさつをした栗山には、この状況に対する備えもあった。


 34歳で中村とともに、チーム最年長となっていた2018年シーズン、楽天から14年ぶりにレジェンド・松井稼頭央外野手(当時42=現ヘッドコーチ)が古巣に復帰した。

 このシーズンを振り返り「自分にとってはめちゃくちゃ大きい」と語っていた栗山は今季と同様、当時若手の台頭で前半戦は試合に出たり出なかったりの控え暮らしが続いていた。

 そんな時、常に視線の先にあったのが、ただ黙々と準備に向かう松井稼の姿だった。当時、栗山は「稼頭央さんがゲームに出られていない時に、どう過ごしているのかを見て勉強させてもらった」とレジェンドの晩年の姿勢に目を凝らしていた。

 当時、松井稼は「試合に出る、出ないは自分でコントロールできないこと。やれることはいつ出番が来てもいいように万全の準備をしておくこと」を信条としていた。その姿勢を意識的に見て学んでいたからこそ、この日があったのだろう。

「準備はいつもしてます」(栗山)。毎日何も変わらず準備に向かえば出場の可否にかかわらず、テンションに波もできにくい。必ず来る苦しい時を想定して、あるべき姿をすでに習得していたプロ21年目だ。