イタリア北部トリノで5月初めに開催された欧州40カ国が参加する欧州最大の音楽祭「ユーロビジョン・ソング・コンテスト2022」で優勝したウクライナ代表のフォークラップグループ「カルシュ・オーケストラ」が、祖国支援のために競売にかけていた優勝トロフィーが90万ドル(約1億1700万円)で落札されたことが分かった。伝統的なウクライナの民族音楽と現代的なヒップホップを融合したカルシュ・オーケストラは、ライバルの英国やスペインを破って優勝を果たし、クリスタルのマイク形トロフィーを贈呈されていた。

メンバーは優勝後、ウクライナ軍を支援するためフェイスブックを通じて競売にかけることを発表。トロフィーのほか、フロントマンのオレグ・プシウクがコンテストのステージで着用したピンク色のバケツ型の帽子も競売にかけられ、総額130万ドル(約1億6900万円)近くを集めたという。米CNNなどによると入札は先月29日夜に締め切られ、トロフィーを落札したのはウクライナのビットコイン企業「ホワイトビット」で、収益金はウクライナ軍のためのドローン調達に充てられるという。

音楽祭は2月24日にロシア軍の侵攻を受けて以降ウクライナ人アーティストが参加した初の主要な文化イベントとなったが、メンバーは優勝した翌日には戦場に戻ったと米メディアは伝えている。カルシュ・オーケストラは今後、ウクライナ軍や慈善財団のための寄付金を募る目的で欧州ツアーも予定しているという。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)